Top向学新聞>ロータリー米山記念奨学会をたずねて 2019年11月1日号


ロータリー米山記念奨学会をたずねて

世界に広がる奉仕と感謝の輪
 



 ロータリー米山記念奨学会は、国際親善と世界平和に寄与することを理念として設立された、日本最大の民間奨学金事業を行う財団だ。2019年の予算規模は14億円で、868人に奨学金を支給しており、予算の大半をロータリークラブ会員からの寄付でまかなっている。これまでに支援してきた奨学生は129ヶ国・地域からの2万人以上にのぼり、大使や学長など各国で要職を務める人物を何名も輩出している。編集部では奨学会をたずね、元奨学生とスタッフの皆さんにお話を伺った。



精神面のケアを重視

 ロータリークラブは、仕事上の付き合いがそのまま親友関係になるような信頼できる仲間を作ろうとアメリカ・シカゴから始まった活動で、今日では世界に120万人以上の会員がいる。ロータリー米山記念奨学会は、“日本のロータリーの父”と称される米山梅吉氏が生前に東南アジアに深い関心を寄せていた遺志を継ぎ、1952年にアジア圏からの留学生を支援する「米山基金」を設立したところから始まった。当初は東京ロータリークラブが単独で行なっていたが、後に日本の全地区で協力する合同事業に発展した。

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米山カウンセラーと奨学生との交流

 米山奨学金の特徴は、奨学金を支給するだけでなく、精神面のケアを重視する人材育成事業として取り組んでいる点だ。「世話クラブ・カウンセラー制度」を設けて、各地区のロータリークラブが行う「例会」で月に一度、留学生に奨学金を手渡ししている。そこでは留学生が将来の夢や母国の事情などを発表する機会があり、それが日本語の上達や研究発表能力の向上につながることも多い。
 一人の奨学生には世話クラブから一人のカウンセラーがつき、日常の相談に応じる。世代を超えた日本人との交流を通じて学校では学べない多くのものを吸収できる。
 米山奨学会事務局長の岩邉俊久氏は、「フェイストゥフェイスの関係を作って家族の一員のように交流し、一緒に奉仕活動をしたり、相談に乗ってもらうことなどを通じて、日本に来て信頼できる人物がいるんだと実感する。それがゆくゆくは、こんなにお世話になったのだから何か恩返しを、ということにも繋がっている」と語る。
 奨学生は指定校推薦で募集し、選考倍率は3倍だ。それだけに勉学面では優秀な学生が選ばれるが、何より重視されているのは異文化理解とコミュニケーションへの意欲だ。応募者のほとんどは日本語が話せる留学生だが、あまり話せない留学生でも応募できる。奨学会で広報・企画を担当する峯氏は、「多少日本語がたどたどしくてもコミュニケーションしようという気構え、姿勢を見て奨学生は選ばれている」と説明する。受け入れる側も、奨学生の日本語能力を伸ばすサポートをするなど、より良い交流に努めるという。
 こうした密度の濃いケアと交流の積み重ねが、信頼関係と生涯続く絆を生む。世話クラブの活動は、話をするだけの交流にとどまらず、地域に出て行って奉仕する活動も含まれるが、それが利他精神を学ぶ機会となっていることも大きな特徴だ。岩邉事務局長は「ロータリーの奨学生は大変だと思います」と率直に話す。「毎月ロータリーの集まりに行って挨拶してみんなの前で奨学金をもらう。しかもクラブで地域の清掃活動をしたり、高齢者施設に行って交流したり、地域のお祭りのお手伝いをしたりといった言わば “面倒くさい”こともある。それでもそういうことにとても関心があって、ぜひ日本人をもっと知りたい、年齢の差も関係なく友人を作りたいと思って集まってくる人たちなんです。自分だけのために生きないで他の人のためにも生きようというのが、米山の精神です」(岩邉事務局長)。

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左:事務局長 岩邉俊久さん
中:2018-20年度よねやま親善大使
  アブデルアール・アハメドさん(ハリームさん)
  (早稲田大学博士課程、エジプト出身)
右:広報・企画 峯純子さん



交流は楽しく 活動に感動


 関西大学で奨学生となり、現在は早稲田大学大学院博士課程に在籍するハリームさん(エジプト出身)は、自宅から片道1時間以上掛かる例会に月2~4回は行っていたという。「例会ではロータリアンの方々が“卓話”といって、自分の人生や、失敗したこと、成功したことをスピーチするのですが、学校でも本でも学べないことが学べるのを実感していましたし、歓迎してくれる方々がいらっしゃるので全く面倒とは感じませんでした」と笑顔で話す。交流が楽しいのでホームシックなどには一度もならず、ためになるので皆のために貢献したいという気持ちが芽生えた。「ロータリアンの活動を見て感動し、自分の時間とお金をかけて社会に貢献しようという考えを彼らから学びました」。
 現在は、2018~20年度の任期で奨学金事業のPRをする“よねやま親善大使”として活躍中で、これまでに北は山形、南は奄美大島にまで出かけてスピーチした。「私の卒業前には、クラブの皆さんがどうしても私の生まれ育った所を見たいと言って、エジプトの実家にまで行ってくれました。米山の活動は一度交流したら縁が切れません」と熱く語る。

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モンゴル・ウランバートルでの米山学友による第2 回世界大会“絆in モンゴル”
(主催:モンゴル米山学友会、2019年7 月27・28 日)



「米山の大家族」 帰国生が恩返し

 2019年7月27~28日にはモンゴルのウランバートルで、世界から元米山奨学生や現役奨学生を集めて2年に1度開催する“世界米山学友の集い”を開催した。参加したハリームさんは、「どこに行っても仲間がいて、本当に世界が狭い」と実感した。世界に同じ考え方をもって奉仕をしてきた人たちのネットワークが広がっている。岩邉事務局長は、それを「米山の大家族」と表現する。
 元奨学生の同窓会組織「米山学友会」の活動も活発だ。日本国内に33、海外には9の米山学友会があり、ロータリークラブとの交流で育んだ「奉仕の精神」の下、さまざまな活動に取り組んでいる。学生への支援もその一つで、台湾、韓国では帰国生が自分たちで資金を集め、留学中の日本人学生に毎年奨学金を出している。カウンセラーとしてマンツーマンでサポートにつき、まさに「各国版の米山奨学金」を展開しているのだ。「お世話になったから、自分達も何を返せるだろうかという気持ちでやってくれている」(岩邉事務局長)。
 米山梅吉氏は「何事も人々からしてほしいと望むことは人々にもその通りにせよ」という言葉を遺したが、その精神は留学生を通して受け継がれ、国を超えた奉仕と感謝の環となって広がっているようだ。

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韓国米山学友会「帰国米山学友歓迎会」には日本人奨学生も参加(2019年5月)

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ネパール米山学友会が無料医療キャンプを実施(251人に治療・投薬)


公益財団法人ロータリー米山記念奨学会 WEBサイト
http://www.rotary-yoneyama.or.jp/





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