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向学新聞2024年10月号記事より>

日本の労働移民政策 新たな段階に

OECD(経済協力開発機構)と国立社会保障・人口問題研究所は、日本の労働移民政策に関する調査結果を公表した。日本の外国人政策について、客観的データをもとに広範囲に分析したレビューとしては初めて。

大前提として、労働移民政策の中心的な目的は、「国内労働市場に悪影響を与えることなく、また移民の脆弱な出身国の発展見通しを妨げることなく、国内労働供給を活用しても満たすことができない労働市場ニーズを合理的な時間軸の中で満たす手助けをすること」であるとし、しかしその達成の評価や移民が労働市場に与える影響の分析は難しい、としている。

諸外国との国際比較から、現在の日本の現状や課題が客観的に確認できる内容がまとめられている。同報告書の内容を踏まえ、本調査の訳者である国立社会保障・人口問題研究所の是川夕氏は、「公正で安全な国際労働市場の構築は簡単ではなく、どの国でも移民政策はセンシティブな問題。だが、持続的に経済社会を発展させていきたいのであれば、現実を前提にした制度設計、社会運営を行う必要がある」と述べている。また、外国人材に関するプログラムの情報が散在しているため、一元化したプラットフォームの創設などの提案もなされている。


・OECD加盟国の移民人口比率(10・4%)に対し、日本は2・2%と低い。
・日本は失業率が15年間低水準で求人も多く、労働市場は良好。
・OECD加盟国の中では、日本は永住権取得の条件が厳しい。
・外国人労働者の配偶者の就労にも条件が付く。
・雇用の流動性の低さが、人材獲得の妨げになっている。
・外国人の日本社会への統合は難題。労働移民支援のための統合政策を最近ようやく策定したばかり。
・高技能移民は日本に長期滞在する傾向がある。
・外国人留学生は、人材獲得維持の重要な資源。
・留学生の卒業後の定着率は、10年で上昇。国際比率でも高い。
・「労働移民政策」は労働市場の変化に対応するために検討された政策オプションの一つ。
・特定技能制度は、低・中技能労働移民が日本にとどまるための明確な道筋を示した初めての政策。日本の労働移民政策は、育成就労制度の成立で、量・質両面で新たな段階に進む
・技能実習制度の重層的な監理監督の構造システムは残すべき。

「日本の移住労働者 OECD労働移民政策レビュー
Recruiting Immigrant Workers:Japan 2024」より抜粋


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