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TABLE FOR TWO 


健康メニューで途上国支援  世界の食の不均衡を解決


 今月は、社員食堂の健康メニューを通じて開発途上国支援を行う「TABLE FOR TWO」の、小暮真久事務局長にお話をうかがった。

一食あたり20円を寄付

――活動の概要について教えてください。
小暮  TABLE FOR TWO(テーブル・フォー・トゥー)は、先進国の人々が社員食堂などで、カロリーや栄養に配慮した健康食をとることで、一食あたり約20円が開発途上国の学校給食に寄付されるプログラムです。
  先進国の私達の食事は大抵の場合、適性なカロリーの摂取基準を超過してしまっています。そこで、食事をもう少しカロリーを抑えたものに変え、その分浮いた食事代を、飢餓に苦しむ開発途上国に寄付するという仕組みです。例えば同じ材料にしても調理方法を工夫したり、通常よりも肉の量を減らしたり、普通ライスを小ライスにしてカロリーダウンします。その健康食を企業または給食会社が社員食堂で配膳し、従業員がその食事を買い求めるとき、彼らは途上国に20円寄付することに同意するというわけです。
  テーブル・フォー・トゥーは企業の社会貢献活動の一環としてアピールでき、従業員の意識啓発にもつながります。従業員が支払う20円に企業が更に寄付金額を上乗せしたり、20円のうちの10円を企業が負担したりすることによって従業員の社会活動への参加を奨励することができ、資金的補助を通じた国際貢献と、従業員の健康促進につながるので企業としても参加しやすいものになっています。
  20円という金額はほぼ開発途上国の学校給食一食分に相当します。テーブル・フォー・トゥーという言葉には、先進国と開発途上国の人々が時間と空間を超えてテーブルを囲み、食事を共にするという意味が込められています。
  この活動は、グローバルな諸問題を話し合い、解決するため毎年開かれる世界経済フォーラム(ダボス会議)で選ばれた、日本人のヤンググローバルリーダーたちが発案したものです。いま世界の人口は67億人で、そのうち栄養失調や飢餓で苦しんでいる人が約10億人います。一方で皮肉なことに食べすぎで病気になっている人も約10億人います。こうした食の不均衡の問題を双方同時に解決しようとするものです。
  今春以降の試験的実施では、伊藤忠商事、ファミリーマート、日本IBM、日本航空、横浜市、NECなどがプログラムを実施しました。この結果、テーブル・フォー・トゥーを通じて開発途上国に寄付される寄付金額の合計は学校給食約4万1000食分にのぼっています。これは開発途上国の生徒約200人の給食1年分に相当する額で、貨幣価値の違う途上国では大きな力になっています。来年以降の本格展開では、多数の企業・団体の参加が予定されており、更に多くの開発途上国の子供たちが食べる学校給食への支援を期待しています。
  開発途上国支援において何よりも重要なのは、一人一人の意識です。例えばゴミの分別なども始まったころはみないい加減でしたが、ずっと言われ続けた結果浸透し、みな分別し始めています。この活動も、継続することでゆくゆくは人々の意識に浸透していくだろうと考えています。
  いっぽうで先進国の人々の健康管理も重要な課題となっています。アメリカでは肥満が社会問題化しており、ニューヨークでは子供の半分が肥満だというデータもあります。日本では2008年4月から特定保健指導が義務化され、企業が責任を持って従業員の健康管理をしなければならなくなります。社員食堂でもより健康的な食事を提供することが必要になってくるでしょう。そこで我々は食堂事業者と提携し、栄養バランスに優れかつ730キロカロリー前後に抑えたヘルシーメニューを提供しています。このようなメニューを考えるのはなかなか大変なのですが、あるシェフの方が100種類ものヘルシーメニューを作り、他に公開しても良いといってくださったのです。料理人の方は熱い思いをもった方が多く、「食を通じての社会貢献活動はなかったので何かできることがあればぜひやりたい」と連絡を頂くことがあります。意外なところに国際協力の担い手が眠っているのです。

リーダーとしての責任

――小暮さんが社会貢献活動に携わる動機とは。
小暮  先日インドに行った際に、路上生活をしている子供たちを保護、教育し、社会復帰させる施設を見てきました。開発途上国の子供は純粋で、何もない中で育ったので大人が来るだけで喜ぶのです。むしろ日本の子供より幸せなのではないかと感じたくらいです。それを通じて、「自分が何かを与えることで喜ぶ人たちがいるなら、そういう世界で生きるのは意義のあることだ」という思いを改めて強く持ちました。
  私は学生時代から、もっと日本から世界に貢献する動きがあって良いと考えていました。これだけ技術もお金もあるのですから、あとは人さえ集まれば世界のためにできることはあるのです。日本ほど平和で治安の良い国はないですし、経済的にも本当に恵まれていると思います。ですから日本は少なくともアジアのリーダーとして、諸外国に貢献していく責任を負っていると思います。成熟社会としてなすべきことがあるのです。それは、他でもない日本人のだれかがプロデュースしていかなければなりません。今後もこの活動に多くの人を引き込んでいけるよう、地道に訴えかけを続けていきたいと思います。