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小型無人機システム 


災害時の状況把握に効果  地域のセーフティネット構築


  今月は、小型無人機システムの開発を行う、NECの和田氏と荒井氏にお話を伺った。

自動操縦で飛行


――小型無人機システムとは何ですか。
荒井 カメラを搭載した小型の電動ラジコン機(翼長約2m)をGPSや姿勢角センサーによる自動操縦で飛行させ、地上の様々な映像情報を集めるシステムです。画像はリアルタイムで地上のパソコンに送信され、土砂崩れや山火事、プラント火災など人が近づきにくい現場での迅速な状況把握手段として使えます。大規模災害などでは、ヘリコプターが飛来するのに時間がかかり初動調査に大幅な遅れが出てしまう可能性がありますが、小型無人機ならランチャーの設置など簡単な準備だけですぐに飛ばすことができます。
  地上のパソコンから飛行経路を入力して、プログラムどおりのコースを約20分間にわたって飛行します。河川に合わせて、あるいは敷地の外周に沿って飛ぶことなどができ、経路は飛行中にも変更できますので、異常部分に近づいて重点的に観察することも可能です。将来的には、ランチャーに常時セットされていて地震があった時に自動的に飛び立って監視を始めたり、大規模災害時に多数飛ばして一斉に情報を集めてくるようなシステムも目指しています。こうした自動操縦や映像伝送などには弊社がこれまで培ってきた制御技術や無線通信技術が生かされています。
和田 通常の可視光カメラに加え、温度を感知する遠赤外線カメラも搭載可能ですので、山火事で上空から見えないくすぶっている個所なども発見することができます。撮影された被災地の状況(動画)はリアルタイムに伝送して、PC上で一部だけ取り出し、ネットワークを通じて防災センターに送信するようなことも可能です。その他、産業廃棄物の不法投棄の監視や、港湾での不審船の監視などにも役立ちます。


鳥瞰図的に把握


――地域のセーフティネット構築につながりますね。
和田 自治体や官公庁、山林関係の公共団体から問い合わせを頂いており、特に防災課や河川関係部署の方の関心が高いです。政府は2004年に「国民保護法」を制定し、テロなど有事の際には自治体が国民を保護誘導し、緊急事態に備えて対処方法を確立するよう定めています。この法律に基づいて国や県、市町村それぞれが「国民保護計画」を策定し、計画通り実行できるように「国民保護実動訓練」を県単位で行うことが定められ、毎年各県が持ち回りのような形で実施しています。一回目は2005年に福井県で行われ、美浜原発が不測の事態に陥った設定で、海上保安庁も含めたかなり大規模な訓練を行いました。その中で県の防災関係部署の方から「こういう場でこそ無人機を飛ばしてみてほしい」と要請があり、試した結果、初動状況の把握に効果があるという評価を頂いたのです。
  災害でもテロでも、起こった最初には何がどうなっているのかわからない状況に遭遇します。その時に、どこで何が起こっているかを空から鳥瞰図的に把握することができれば非常に有効な道具となります。また、災害現場では、被害の拡大を防ぐために現場の情報を隅々まで伝達することが重要になります。そこで、携帯電話で現場の状況を逐一把握することができる仕組みも検討しています。例えば洪水時に、危険地域に住む人の携帯に、河川の動画をアップしたサイトのアドレスを一斉に配信するといったことも可能です。また、大規模な山林火災では、消火部隊が火に取り囲まれて脱出不能になるといった二次災害が起きる可能性がありますが、どこが火に囲まれているかを空からリアルタイムで情報を収集しながら消防隊の安全を確保することもできます。

――危機管理インフラとしての必要性は高いですね。
和田 飛行体を扱う点では、自動車などと同じく使う側の運用責任が求められますが、だからこそ飛ばす人がより使い勝手の良いものにしていかなければなりません。地震や台風など自然災害が多い日本において、防災と災害時の対処の両方に役立ててもらえる、なくてはならないインフラを構築できるよう、各自治体等と一緒になって開発を進めていきたいと思います。


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