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温度差発電 


捨てている熱からエネルギー  CO2 25%減も労せずクリア


  今月は、「温度差発電」の開発に取り組む、慶應義塾大学の武藤佳恭氏にお話を伺った。


温度差だけで発電


――温度差発電とは何ですか。
武藤 携帯用冷蔵庫などに使われている半導体「ペルチェ素子」と、パソコンの放熱用に使われているヒートパイプを組み合わせ、室温と皿に載せる物との温度差で発電します。載せる物が装置より熱いか冷たいかで電流の方向が決まります。5度ぐらいの温度差でも0・5ワット出力し、これほど小さく効率の良い発電装置が開発されたのは初めてです。温度差さえあれば体を当てるだけでも発電しますので、寒暖の差が激しい地域では特に有用です。
  装置は市販の安価な部品を組み合わせて作れる簡単なものです。ペルチェ素子は元素PとNからなるシリコンでできており、石ころからも取れる無尽蔵の資源です。ヒートパイプは人工衛星の放熱用にNASAが開発したもので、現在はパソコンの冷却用に使われています。
  温度差発電は様々な廃熱を利用しますが、そのような無駄に捨てられているエネルギーを収穫して電気に変換する技術をパワーハーベスト技術といいます。地上に存在する廃熱の量は莫大です。例えば自動車のガソリンエンジンの生み出すエネルギーのうち駆動に使われているのは2割以下で、8割は廃熱となって逃げています。ガスレンジや風呂に至っては9割以上の熱が逃げています。また、大きなスケールでは、製鉄所が600度の廃熱を1年中出しています。温度差発電はこれらの廃熱をフルに活用できるのです。鉄鋼業界はCO2削減に猛反対していますが、実は宝の山を持っています。ドライアイスを作っているLNG天然ガスステーションはマイナス170度の冷熱を持っており、両者の間には常に800度の温度差がありますから、隣に移動させて発電すればよいのです。また、私は今、エンジンの廃熱で発電できる自動車やバイクをつくろうと研究中で、鈴木自動車から実験用の車両をご提供いただいています。
  温度差発電の原理自体は1821年に発見されていましたが、廃熱を逃がし続けてきた状況は100年間変わっていません。今がまさに技術革新のチャンスなのです。科学は実用化して社会に役に立つところまで持っていかなければ意味がありません。

――普及すれば社会のあり方が変わりそうですね。
武藤 至る所にある熱源を利用し、自前で発電することが当たり前になってくると思います。今後は一家に一台は小さな温度差発電ユニットがあるような社会にしたいです。風呂場やヒートポンプに温度差発電装置をつけるだけで家中の電気が賄えます。クッキング中はその熱で電気を賄えますので、その間だけ電源を切り替えればよいのです。政府はCO2を25%削減すると言っていますが、温度差発電が普及すれば廃熱の10%を電気に変えるだけで苦労せずクリアできます。
  日本は地熱大国であり、多くの火山帯があります。温泉地などでは、捨てている自然の熱でいつでもただでクリーンエネルギーを作り出せます。先般、熱海温泉で実証実験を行い、源泉と冷水との65度の温度差でLED照明を6個点灯することに成功しました。この場合、家一軒分の400ワット作り出すには、私が作った装置なら20個置けば足ります。将来的にはエネルギーの自給自足により分散電源化が進むでしょう。そうすると送電線が不要になり、長距離の送電線によって生じるの電気のロスがなくなって、まさにスマートグリッドが出現するのです。

――エネルギー問題の多くが解決されますね。
武藤 例えば放射性廃棄物は200~400度の温度がありますので、鉛で固めれば電源にできます。高温なので現在は地下に捨てていますが、100年間は温度を保ちます。放射線さえカットすれば100年間も持つ電池になるのです。
  私は温度差発電を通じ、電気が実は手軽に得られるものだということを示したいと思っています。まず日本が良い手本を示せば、この技術は世界中に普及していくのではないでしょうか。



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