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メタンハイドレート

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メタンハイドレート 


海底下に眠る莫大な天然ガス  国産資源として注目

 今月は、メタンハイドレートの調査研究を進める、東京大学の松本良教授にお話を伺った。

「燃える氷」

――メタンハイドレート(MH)とは何ですか。
 松本 見かけは普通の硬い氷ですが、メタンと水からできており、火をつけるとメタンが燃えて水が残ります。天然ガスが水和して固体化したものです。
 現在、日本はエネルギー資源の96%を輸入に頼っています。エネルギー消費の割合は石油が半分、天然ガスが約15%で、諸外国と比較すると石油に過剰に依存している状態です。もし使用する石油を全て天然ガスに置き換えた場合、それだけでCO2排出量が2割以上削減され、窒素酸化物や硫黄酸化物も減少します。環境への親和性や資源の多様化の観点から政府は天然ガスへの転換を進めており、国産資源としてのMHはその意味からも注目されます。
 MHは700~1000m以深の深海の、海底下100~400mより浅い堆積物中にできています。探査方法は、船上から音を出して海底から反射してくる音をマイクロホンでキャッチする地震探査の手法を用います。これで例えば海底下300mより上にはMHがあるが下にはないという境界(BSR)が明瞭に判るわけです。探査の結果、BSRは世界中の大陸周辺部分にはほとんどどこにでもあることが分っています。
 日本では昨年、経済産業省が日本周辺海域のBSR分布図を発表しました。南海トラフなど大陸の斜面に広く分布し、常磐沖、オホーツク海、奥尻島周辺、佐渡沖、南西諸島等でも見つかっています。全体の面積は12万平方キロで、国がプロジェクトを進めているのはその20分の1の5千平方キロのみです。しかしそのごく狭い範囲だけでも現在の日本の天然ガス年間使用量の7倍から14倍、日本全体で使っている総エネルギーの二年分に相当する量が含まれています。塊状のMHはそれ自体の体積の170倍のガスをとりこんでいるので、非常に効率的なガスボンベなのです。グローバルに見た貯蔵量は炭素量にすると約1万ギガトン、十兆トン。これは大気全体のCO2の20倍に及び、海水に溶けている炭素の3分の1に相当します。MHが原因の環境変化が過去に何度か起きた痕跡が最近見つかっています。
 我々は佐渡沖の海底に、塊状のMHが集積している直径約500m、高さ数十メートルの小山を多数発見しました。山が崩壊した壁には硬いMHがむき出しに見えており、あたかも〝白色の石炭〟が海底に露出しているかのようです。こうした海域であればMHの回収も簡単かつ効果的に行えそうです。
 公表されている資源量と分布可能面積から推定すると、日本のMHの総埋蔵量は年間エネルギー使用量の100年分ぐらいはありそうですが、天然ガス需要が倍増すれば数十年分ぐらいしかないかもしれません。現在は主として輸入LNG(液化天然ガス)も使っているわけですが、それと混合し他のエネルギーも使い、国としてバランスの取れたエネルギー安全保障を考えることが必要です。国内生産が期待できれば、海外からの供給がストップした場合にも機敏に対応できます。

――天然ガス使用の拡大のカギは?
 松本 現状ではコストの問題が大きいです。日本は中東や東南アジアから天然ガスの大部分をLNGとして運んでおり、その際にマイナス162℃の極低温にしています。ハイドレートにすれば極低温でなくとも良く、コストを抑えられます。現在、三井造船が天然ガスをペレット状のハイドレートにして運ぶテストを行っています。最終的には天然ガスの運搬に使われるのはパイプラインですので、そのインフラをどこまで整備できるかが天然ガス需要を拡大するための重要な鍵です。

――洋上プラットフォームの計画も?
 松本 大きなタンカーのようなものを作り、採取した資源を船上で精製して直接輸出しようというものです。普通は掘削やぐらのあるプラットフォームからパイプラインで陸上に運び精製しますが、その船自身が精製能力を持っていれば新たなパイプラインも陸上施設も作る必要がありません。容易に移動できるので、大規模開発に不向きな小さな資源でも拾い集めることができます。さらに回収した天然ガスの運搬手段としてハイドレートを使えばコストもさらに割安になると考えられます。

――MHを採取後に地層が不安定化するのを防ぐため、CO2を埋める方法を提唱していますね。
 松本 MHが存在するところに、やや温度が高いCO2ガスを注入するとMHが溶け、CO2が硬いハイドレートになってMHと置き換わります。つまりCO2とメタンのガス交換です。これで効率的にメタンが回収でき、化石燃料から排出したCO2を地中に隔離できるのです。近未来の新技術としてもっと大きなフィールドテストをしていく価値は十分にあると思います。



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