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スーパーアクティブ制震

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スーパーアクティブ制震 


震度5強でも鉛筆が倒れない  世界初の地震で揺れないビル

 今月は、世界初の「地震で揺れないビル」の技術開発を行った、株式会社大林組の勝俣英雄氏にお話を伺った。 

揺れを打ち消す

――「地震で揺れないビル」とは?
 勝俣 弊社の技術研究所新本館では、建物の揺れを地面の揺れの50分の1に低減できるスーパーアクティブ制震「ラピュタ2D」を適用しています。これは地震がきても揺れない世界初のビルです。実験では震度5強の揺れを加えても床に立てた鉛筆が倒れません。

――なぜ揺れないのでしょうか。
 勝俣 地震が起こると地盤の揺れをセンサーが感知し、揺れと反対方向に建物を動かすことで打ち消してしまうのです。建物はあたかも空中に浮かんでいるかのように全く揺れません。地盤と建物の間には、モノを押したり引いたりするアクチュエータという装置がついています。建物をどれだけ移動させるかが1000分の1秒単位でコンピュータから伝えられ、アクチュエータは揺れの発生後0・1秒で作動します。
 弊社は最初の免震ビルを1986年に建設し、1988~89年に行った実験ではアクティブ免震が原理的に可能なことが分かりました。しかし建物全体をアクチュエータで動かすことはできず実用化は無理だと判断しました。ただ、建物の最上階につけた重りを動かせば1年1回程度の大風が吹いても建物の揺れがほとんど感じない程度に止まることがわかったので、その方向で研究を進めて今日まで技術をつないできたのです。
 89年当時からの改善点は、アクチュエータと建物との間にクッションを入れて悪い動きが吸収されるようにしました。そして地面が動いた量を測るセンサーの信号処理がデジタル化されて精度が上がり、コンピュータのスピードが圧倒的に速くなったため、瞬時に揺れを打ち消す装置が実現できたのです。また、建物を支える積層ゴムが大きく進歩しています。開発当初のゴムは硬く、アクチュエータは現在の6倍必要で、装置の値段が建物と同じくらいかかりました。現在は柔軟なゴムが開発されたためアクチュエータの台数が6分の1になり、コストの大幅な削減に成功しています。

工場等にニーズ

――想定される実用の場面は。
 勝俣 例えば半導体工場です。半導体は微細な加工をするので製造工程で揺れてはいけないと定められており、免震には高度な性能が要求されます。日本の半導体産業を影で支えているのは実はゼネコンだと思っています。例えばシリコンをある工程段階では有毒ガスを使用して加工することもあり、揺れが大きければ一旦、ラインを止めて点検するのですが、すると一日数億円の売り上げがなくなってしまいます。特殊な素材を作る製造ラインでは、素材が不安定な状態で揺れて製造設備を壊してしまい、復旧にひと月かかることもあります。こういったところにはスーパーアクティブ制震のニーズが大いにあると思います。
 もう一つは病院です。患者さんを運ぶストレッチャーやメスを運ぶワゴンは免震構造を取り入れたビルの中でも、いざ大きな地震が起こるとゆっくりと動いてしまうのです。スーパーアクティブ制震なら、重大な手術を行っている最中に地震が来てもストレッチャーやキャスターが移動することなく手術を続行できます。
 また、倉庫を免震にすると保険が安くなるので、いま、免震構造を持つ倉庫が増えてきています。通常の免震装置では性能が足りない場合にはスーパーアクティブ制震が力を発揮します。

――3D制震装置の可能性は?
 勝俣 小さい建物なら空気ばねを使った3D制震が可能です。圧力をかけて空気をゴムの中に入れ、コンプレッサーで空気を補給する仕組みで、すでに実際に使われています。

――研究開発にかける思いとは。
 勝俣 地震は稀にしか起こらないので、一般の方には年一回真剣に考えてもらうくらいにして、専門家が毎日頭を悩ませればいい。社会全体の中で私たちはそういった役割を分担していると考えています。社会を支えている意気込みがあるからこそ、エンドユーザからの反応がなくても続けられるのです。例えば電車の運転手は定時に運転して当然なのですが、それと同じように誰かがやらなければならない仕事です。目立たないけれども一番基本の部分で人々の安全を支えているという気概を持って仕事に取り組んでいます。



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