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海洋エネルギー 


原発約1400基分以上  世界史に残る震災復興を

 今月は、東京大学生産技術研究所教授、海洋エネルギー資源利用推進機構会長の木下健氏にお話をお聞きした。

無尽蔵の電力

――海洋エネルギーはどれほど有効なのでしょうか。
 海上に浮かべる浮体式洋上風力では、日本の周りの海で原子力発電所の約1400基分の発電が可能です。現在日本には54基の原子力発電所があり、発電総電力量の3割近くを担ってきましたが、それと比べると洋上風力は無尽蔵に電力を生み出すことができます。また、海流や波の上下運動を利用する波力発電は原子力発電所の36基分、実証実験が更に進めば166基分もの量を発電できます。その他にも海洋の温度差を利用する方法などがあります。

――日本での注目度はまだ低いように感じます。
 そうですね。しかし、化石燃料や原子力に頼るエネルギー源を多様化させることが日本の命題なのです。例えば、地球温暖化の原因とされるCO2を発電時に排出しない原子力に特化した結果、今回のエネルギー不足という問題が起きてしまいました。しかし、再生エネルギーと言うとコストや発電量に対するマイナスイメージがあり、消極的な姿勢の方もまだたくさんいらっしゃいます。現在の課題は、エネルギー源を多様化できていない危険だと気づかなければいけません。

――日本は打開策としてLNG(天然ガス)に力を入れ始めていますね。
 CO2の負荷が小さい面でも、プラントが早く建設できるという面でもLNGの利用は正解です。しかしそれに特化すると、今回のエネルギー不足問題と同じことがいずれ起きるでしょう。また、世界では既にLNGは主要な戦略物質になっています。天然ガスを豊富に持つロシアや資源獲得に力を入れる中国が台頭し、エネルギー問題に危機感を抱いたアメリカは、天然ガスの開発を急激に進めました。そして5年程前に無尽蔵の天然ガスを発見し、安価な実用化に成功しました。その結果、天然ガスの価格に大きな影響を与えることができるようになったのです。エネルギー価格が一国の意思で左右できる状況で、日本が過度にその資源に依存することはあってはなりません。1年後などの近い将来のためには、LNGプラントを多く建設しなければなりませんが、更なる未来を考えた場合、他の方法を見つけなければいけません。それが海洋エネルギーなのです。

――再生エネルギーの中でもなぜ海洋なのですか。
 日本は陸上の再生エネルギー技術は後進国なのですが、先進国のヨーロッパでは、陸上の活用は15年以上前から取り組んでおり土地のキャパシティが一杯になってきています。ヨーロッパの再生エネルギーの主流が陸から海に変化し、アメリカや韓国などの世界市場も海に注目を集めています。ですから、海という厳しい自然環境で活用できる新しい技術が世界で求められています。商業的にも技術的にもフロンティアである海にこそ、日本が最先端の技術競争に勝ち、世界の新しい仕組みを作ることができるチャンスがあるのです。

――その可能性を被災地復興に取り込もうとされているのですね。
 国会議員の方や企業、自治体に復興プランを提案し、実現化が進んでいます。東北の海岸線100キロメートルにわたり、アジア・太平洋地域最大の「海洋エネルギー利用特別海区」を設定し、近い将来、原子力発電と同じ量を再生可能エネルギーに置き換えることを出発点にします。エネルギーの自立や工場の誘致などにより継続的に5~10万人の雇用を生み出すことができます。さらに、海洋エネルギーを漁業に利用し、最先端の沖合養殖の開発なども検討しています。また、被災地のがれきをケーソン(水中構造物で使用される大型の箱)内にコンクリートで固め、洋上風力などのアンカー(錨)として200年間海底で保管することも提案しています。海洋エネルギーのできることを最大限に活かしたプロセスで、世界史に残る震災復興を成し遂げたいと考えています。



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