Top向学新聞>2016年1月号


三重県知事 鈴木 英敬氏 


「忍者」・「海女」がPR二本柱


魅力売り出さないと「もったいないやん!」


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 5月26~27日に開催される伊勢志摩サミット。今回は特別インタビューとして、サミット会場となった三重県の鈴木英敬知事に、三重県の魅力やお勧めの観光ルートなどを伺った。

―いよいよ伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)が5月26~27日に開催されます。伊勢志摩が会場に選ばれた決め手は何だったのでしょうか。

 安倍総理は昨年、開催地決定の記者会見で伊勢志摩を「日本人のふるさとの原風景だ」と表現されました。伊勢志摩は海と山に囲まれた自然豊かな土地です。そして安倍総理が「日本人の心のふるさと」と表現された伊勢神宮には、2013年の式年遷宮で過去最高の1420万人の方に足を運んでいただきました。人口が3000万人だった江戸時代にも、10人に1人にあたる300万人が参拝していたそうです。伊勢志摩は世界の首脳に日本の精神性に触れて頂く良い場所だと判断していただいたのだと思います。

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       伊勢志摩サミット会場(三重県広聴広報課提供)

―サミット会場になったことで国内外の注目を集めることになりました。特に海外に向けてアピールしたい三重の魅力は何でしょうか。


 歴史ある「伊賀流忍者」と「海女」をPRの二本柱にしています。忍者は漫画・アニメを通して既に世界的に知られています。また、海女さんは全国に約2000名おり、その半分は三重の海女さんです。三重ならではのオリジナリティーに加え、「体験」もポイントですね。伊賀には忍者体験施設があり、三重大学は「忍者学」講座を提供している唯一の大学です。三重大の留学生には海女を体験してもらい、SNSで情報を発信してくれています。
 
 三重には松阪牛など多くの名物がありますが、「松阪牛と神戸牛の違い」を即座に理解していただくことは難しいです。そこで、これまで県に足りなかったマーケティング・コンテンツの差別化・地域毎のPRなど観光の産業化に着手したのです。その結果、「忍者」と「海女」を中心として積極的に国内外でPR活動を展開するようになりました。
 
―「忍者」・「海女」に対する海外の反応は。


 やはり国ごとに反応が異なりますね。例えばアメリカでは忍者パフォーマンスが好評です。一方、昨年フランス・パリで忍者セミナーを開催したところ、「なぜ忍者が誕生したのか?」「忍者のライフスタイルは?」といった理論的背景に関心が集まりました。

―なるほど。昨今、訪日外国人旅行者数の増加が話題になっています。特に東京~京都・大阪間を観光する「ゴールデンルート」が人気です。そこで、知事が外国人留学生にお勧めしたい「1泊2日!三重のゴールデンルート」をお聞きしたいのですが。


 三重県は南北に長く、サミット会場となった南側であれば、やはり初日は伊賀で忍者体験、二日目は伊勢志摩で海鮮料理など海の魅力を堪能し、伊勢神宮へ参拝がお勧めですね。
 
 北側であれば、一日目は鈴鹿サーキットで目一杯遊び、二日目は四日市の「四日市公害と環境未来館」で環境問題を学習。その後は長島のアウトレットで買い物も良いですね。四日市コンビナートの夜景クルージングも人気です。以前、アセアン10カ国のプレス関係者を四日市に招待してプレスツアーを実施しました。公害被害者の経験談、環境未来館、夜景クルージングをご案内したところ、非常に感動していただけました。

―海外からの旅行者はいくつもの地域をまたいで観光する方が多いですが、三重県は他県とも連携してPR活動を行っているのでしょうか。


 三重県は和歌山、奈良、京都、滋賀、岐阜、愛知と隣接しており、広域的なPR活動に取り組んでいます。一昨年は熊野古道が世界遺産登録10周年という節目を迎え、古道を共有する奈良・和歌山と連携してシンポジウムの開催などを実施しました。愛知・岐阜にはタイからの旅行者が多く、三重にもお越しいただきたいと、岐阜の白川郷→名古屋→伊勢などの観光ルートを構築しています。

―伊勢神宮、鈴鹿サーキット、松阪牛など個別に知られているものは多いですが、これまで県単位では印象が弱かったように感じます。しかし知事就任以降、伊勢神宮の式年遷宮やサミットなどのチャンスを活かし、積極的な観光PRに取り組まれています。どのような思いがあるのでしょうか。


 私は元々兵庫県出身で、大学生から30歳過ぎまでは東京で生活していました。経済産業省を退職後、2009年の衆議院選挙に三重2区から出馬しましたが落選。それから2011年の三重県知事選挙に立候補するまで、日本全国47都道府県を巡りました。その時、「三重県は色々な魅力が溢れているのになぜ売りださへんのやろうか。もったいないやん!」と感じました。その思いこそ知事選出馬の大きな動機であり、三重でもう一度挑戦することの原動力でした。伊勢志摩サミットの誘致も「どこにも負けない。三重県が一番だ!」という気持ちで活動しました。これからは県民一人一人が自信を持って、三重に観光に来てもらえるような、投資してもらえるような、住んでもらえるような場所にしていきたいと思います。三重県のポテンシャルは無限大です。

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すずき えいけい 1974年8月15日生まれ。灘中学、灘高校を経て東京大学経済学部卒業。1998年通商産業省(現・経済産業省)に入省。中小企業支援、特区や農商工連携といった地域活性化などを担当。第1次安倍政権時に官邸スタッフとして、教育再生や地球環境問題に取り組む。2008年経産省を退職。第45回衆議院選挙に三重2区(四日市南部・鈴鹿市・亀山市)から立候補するも落選。2011年三重県知事就任。2015年に再選し現在2期目。知事として2人目となる育児休暇を取得。



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