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洪 宗郁氏 
(同志社大学 グローバル地域文化学部准教授) 


アジアと共に世界を考える時代  日本を再発見し世界へ

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――世界で留学生誘致競争が激化しています。日本が魅力的な留学先になるために必要なことは。
 現在日本は「留学生30万人計画」の実現に向けて動いていますが、英語による授業の拡大や寮の整備などの施策が進んでいます。そういった課題は予算をかければある程度改善できることで、もっと大きな戦略や未来像が必要なのではないかと感じます。
 海外に目を向けると、近年中国や韓国を留学先に選ぶ学生が増加しています。両国でも英語化は進んでおり、特に韓国では規模の大きい大学教員の大半が米国で学位を取得しています。英語という国際通用性の高い言語の導入は効果的ですが、日本が競争に勝つためには、グローバリゼーションを単にキャッチアップするだけではなく新たな方向性を世界に発信していかなければならないと思います。

――ご出身である韓国では、どのように韓国留学をPRしているのでしょうか。
 韓国はこの50年間の経済発展を目玉に、その経験を世界にPRしています。日本や欧米諸国は戦前から大国としての地位を築いていましたが、韓国は20世紀中頃から急激に発展してきました。そういった歴史はインドやアフリカといった途上国の学生にとっては国の状況が比較的似ており魅力的に映るようです。

――では日本はどのような経験を世界に伝えるべきでしょうか。
 日本の留学生史を振り返ってみると、既に20世紀初頭に中国やベトナムから留学生が来日し、彼らはその後母国の近代化に大きく貢献しています。彼らがなぜ日本で学んだのかと言えば、日本は欧米とアジアを繋ぐ役割を担ってきたからです。日本は単なる欧米知識の伝達者ではなく、欧米知識を吸収していく中で独自の文化を形成してきました。その世界史的な位置が魅力的だったわけです。その魅力は現在も失われていませんが、今日では中国が大きく台頭し、日本と中国という二大漢字文明圏がアジアの中心になって世界に大きな影響を及ぼしています。もはや欧米に学ぶだけではなく、アジアと共に世界を考える時代となり、日本で学ぶ意義は大きいでしょう。
 個人的な経験で言えば、私の専門は朝鮮半島の近現代史ですが、迷うことなく日本を留学先に選びました。日本の研究水準の高さや、教員の論文の質・歴史観に惹かれたからです。日本は冷戦時代を通し地理的・歴史的に近い立場で朝鮮半島を観察してきており、日本ならではの視点があります。就職について考えれば米国という選択肢もありましたが、自分の専門で本当に実になる勉強がしたいと思いました。韓国人留学生同士でよく「なぜアメリカではなく日本に留学したのか」と尋ね合いますが、共通の意見は理系も含めて日本の研究水準の高さが挙げられます。日本でしか学べないこと、日本にいるからこそ分かることがあり、それを再発見して世界に広めていくべきではないでしょうか。


HONG Jong-wook
 韓国出身。ソウル大学国史学科の学部・修士課程で学んだ後、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。駐日韓国大使館の専門調査員を経て、2007年度から同志社大学で勤務する。専門は朝鮮近現代史。


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