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島田 徳子氏

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島田 徳子氏 
(武蔵野大学 日本語コミュニケーション学科准教授) 


外国人の受入れ 職場の上司が最も重要


相手文化理解と日本文化説明

画像の説明


――経済産業省によると、外国人留学生・元留学生のうち「日本で働くことに魅力を感じる外国人は2割」というアンケート調査結果が出ています。留学生が日本企業に就職し定着を図るために必要なことは何でしょうか。

 留学生の就業支援を考えた時、2つの側面があります。一つはマクロな視点で、企業の人材採用・育成戦略です。経産省の報告書の結果を見ると、外国人が日本企業に就職したくない大きな要因は、長時間労働・職務内容がはっきりしない・キャリアパスが不透明といった日本型雇用形態です。この問題は留学生に限らず、日本人の若者の採用・定着においても同様の課題が見受けられます。日本型雇用を改善するかどうかを含めて、企業がどのように人材の多様化を成長戦略として考えていくのかが鍵になります。
 
 もう一つがミクロな視点で、私の専門である「職場」でのダイバーシティマネジメントです。今日、非正規雇用者の増加など職場の構成員が多様化し、外国人の受け入れ以前に、日本人同士でも共通のビジョンを共有しにくい環境です。外国人採用が注目されることでその問題がより顕在化しています。また、NHKの調査(2012年)では、「社内のコミュニケーションに課題がある」と考える日本企業は7割を超えています。ダイバーシティマネジメントにおいてコミュニケーションがキーファクターになるにもかかわらずです。
 
 では右記の問題点を踏まえて、そのような職場に外国人社員が入社した場合、どのような対応が必要なのか。最も重要になるのが職場の上司です。東京大学の中原淳准教授は、「上司による業務支援、精神支援、内省支援」の3つが新入社員による組織の適応に必要だと指摘しています。外国人社員のケースを考えた場合、私はさらに異文化コミュニケーション支援が必要だと考えています。異文化コミュニケーション支援とは、「相手文化理解支援」、「日本文化説明支援」、「異文化内省支援」の3つに分類できます。
 
 例えば「相手文化理解支援」とは、外国人社員との会話で、「中国ではどうなの?ベトナムでは?」と相手の文化を知ろうとすることです。そして「日本文化説明支援」とは「日本ではなぜこうなのか?」をきちんと説明できることです。そもそも相手文化への理解がなければ、外国人に伝わる形で具体例を使いながら分かりやすく説明することも難しいです。先ほど申し上げた、職務内容がはっきりしない・キャリアパスが不透明といったマクロな視点の課題についても、上司に説明能力が求められます。上司が相手文化を理解しながら、企業の歴史・ビジョンを伝えるなど文化的支援をすることで、外国人社員に「この組織が好き、長く働きたい」といった思いが生まれ、定着に繋がっていきます。
 
 異文化コミュニケーションの重要性は以前から指摘されているものの、人件費が削減され新入社員の教育に手間をかけることができない職場が多いため、追加の調整コストを強いることになり進んでいません。海外勤務経験がある日本人上司であれば外国人社員にとって大きな助けになりますが、そういったケースばかりではありません。ダイバーシティマネジメントに覚悟して取り組んだ企業ほど外国人社員の定着率や業務の生産性が上がっていくのだろうと思います。


――外国人社員を受け入れるにあたって、日本企業および日本人社員の変化が必要ですが、外国人社員側も日本文化を理解し受け入れる努力が必要になってくるのでしょうか。

 そうですね。外国人社員の受け入れ問題は、企業と外国人社員双方の努力が求められます。
 
 ミクロな視点で上司の支援が組織に適応するうえで非常に重要だと指摘しましたが、逆にどういった外国人社員が上司からの支援を受けやすいのかの調査を行いました。その結果、2つの対人コミュニケーションスキルを身に着けている外国人社員がそれに該当することが分かりました。積極的なコミュニケーションスキルと日本的な間接的コミュニケーションスキルの2つです。前者は、信頼を得るために積極的に自己開示する方法で、一般的に欧米で評価されるスキルです。後者は、配慮や察しを重要視する日本的なスキルです。この二つを上手く使い分けている外国人社員がより上司からの支援を受けています。
 
 例えば、自国の文化を知ってもらうために積極的にコミュニケーションを取る一方で、上司が疲れているなと思ったら、さりげなく上司が好きなコーヒーを差し入れすることができる社員です。結局、こういった外国人社員は世界中どこに行っても活躍できます。


――どのようにご指摘頂いた2つのコミュニケーションスキルを身に付けた学生を育てることができるのでしょうか。

 この2つのコミュニケーションスキルは、他者との信頼関係を築き適切な支援を得るために必要なのですが、もう少し突き詰めて考えると、自らが新しい経験から学び成長し続けるためには、他者からのフィードバックが欠かせないからだとも言えます。 
 
 自律的な成長サイクルの定着に関して、組織行動学者デイビッド・コルブによって提唱された「経験学習モデル」が有名です。「経験学習モデル」とは、「経験→内省→抽象化→もう一度試す」というサイクルで、具体的には「個人が置かれた状況の中で具体的な経験をし(具体的経験)、その経験を多様な観点から内省し(内省的観察)、他の状況でも応用できるように一般化・概念化して(抽象的概念化)、それを次に実際に試してみる(能動的実験)」というステップです。このサイクルをまわすために、他者からフィードバックを得ることがとても大切になるのです。

 「経験学習モデル」を生かした授業の一つに、「日本研究(政治・社会)」という授業があります。日本人学生と留学生30人ほどのクラスで、日本の時事・社会問題の中から、各自探究するテーマを決めて、情報収集やレポート執筆を行い、最終的にポスター発表を行います。1学期目は、情報収集やレポートの書き方を学びながら、レポートを仕上げ、研究成果をポスターにします。2学期目は1学期に作成したポスターを小グループに分かれて発表し、グループ内でフィードバックを受けリフレクションして、2学期の自己目標を立てます。そして、もう一度新しいテーマで、情報収集・レポート作成・ポスター発表を行い、「経験→内省→抽象化→もう一度試す」のサイクルで成長を実感できるようにしています。他者からのフィードバックを上手に得ながら、自律的な成長サイクルを身につけることで、「空気を読むだけではなく空気を変えられる人になろう」と伝えています。


しまだ のりこ
お茶の水女子大学人文科学研究科日本言語文化専攻修士課程修了。東京大学情報学環学際情報学府文化・人間情報学コース博士課程単位取得後退学。日本アイ・ビー・エム、国際交流基金日本語国際センター専任講師、慶応義塾大学非常勤講師などを経て現職に。


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