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トップに聞くグローバル教育の行方

Top向学新聞トップに聞くグローバル教育の行方>福原紀彦氏(中央大学学長)×佐々木瑞枝氏(金沢工業大学客員教授)

福原紀彦氏(中央大学学長)        
×佐々木瑞枝氏(金沢工業大学客員教授)
 


1週間全キャンパスが外国に  
ロースクールの国際的な「ハブ化」へ

 1885年、実地応用に優れたイギリス法を身に着けた人材を育成するため、18人の若き法律家たちによって創設された「英吉利法律学校」。今日では、法学の名門・中央大学として知られている。今回は中央大学の福原紀彦学長に金沢工業大学の佐々木瑞枝客員教授がお話を伺った。


(佐々木) 中央大学といいますと、法学部や司法試験合格者数が日本トップレベルだというイメージがありますよね。

(福原) ありがとうございます。おかげさまで2012年は司法試験合格者数が全国一という実績を残すことが出来ました。中央大学は創立以来実学主義を掲げ、公務員や実学に基づく職業に就く人が多いため、ドメスティック(自国志向的)な印象があるようです。しかし、本学は1885年にイギリス法律学校として創立されました。「社会あるところに法あり」という言葉もあるように、法は社会から生まれてくるというイギリス流合理主義・実利主義が日本で根付くようにとの考えを元に、日本で初めてバリスタ(法廷弁護士)の資格を取った増島六一郎をはじめとした18人が中心となって学校を創立しました。増島らはイギリスのミドルテンプル法学院に留学していたため、このミドルが中央大学という名称の由来だという説もあります。

(佐々木) そうだったのですか。興味深いお話です。ところで、大学のグローバル化についてお聞きしたいのですが、外国人留学生の受入れも進んでいるようですね。

(福原) 2013年5月現在で、31カ国・地域から798名の留学生を受入れています。外国人留学生と日本人学生の国際交流は様々ありますが、その1つが国際寮です。日本人学生も入寮する「混住」で、現在の寮長は日本人学生が務めています。学生同士で色々な催しを企画したり、互いに学びあうなど充実した寮生活を送っているようです。現在は学外にありますが、多摩キャンパス内にも新たに設置する予定です。

(佐々木) まさに学生たちが主体的に取り組むグローバルプランですね。

(福原)今年3月多摩キャンパスにグローバルラウンジ(Gスクエア)をオープンしました。ここには9面マルチディスプレイを設置し、BBC、アルジャジーラなどの海外の番組を視聴できるほか、世界の1700紙以上の新聞も閲覧できます。さらに、1週間全キャンパスをある国一色に染め上げるインターナショナル・ウイークを開催しています。例えば昨年はドイツウイークと国連ウイークを開催しました。ドイツウイークでは駐日ドイツ大使やドイツ企業の関係者などが来校され、後楽園キャンパスではドイツ留学経験者である森鴎外特集をしたりしました。徹底してドイツの文化を理解する週にしたわけです。その他の国際交流イベントも開催しており、積極的に国際交流に取り組んでいます。

(佐々木) 海外大学との交流も活発に行われているようですね。

(福原)現在、海外の約140大学と協定を結んでおり、単位互換制度も行っています。認可できる単位の枠をもっと広げ、ダブルディグリー制も視野に入れています。さらに、来年からは従来の欧米の大学に加え、東南アジア諸国とも提携を強化しようと準備しています。まずタイ・ベトナム・シンガポール・インドネシア各国と30名ずつ学生を交換する計画です。
 本学は法律の体系整備を通しての国際貢献を目指しており、東南アジア諸国へは、多くの教員がJICA等を通して法制支援のボランティアに出かけています。そこで日本の民法や商法をベースに、なるべく日本の法律と親和性のあるルールを作ってもらうことで、例え争議が起こったとしても解決が容易になることが期待されます。
 また、世界各国の協定校から本学のロースクールに学生や教員が集うようにすることで、ロースクールの国際的な「ハブ化」を目指しています。例えば本学は日本の法体系に関して英語で講義をし、ボストン大学からはアメリカの法体系に関して講義をしてもらうなど、本学に来れば各国の法体系を学べるような取組みを始めています。

(佐々木) なるほど。ロースクールの「ハブ化」がさらに充実していけば、協定校だけではなく世界中の学生にとっても魅力的な留学先になるでしょうね。昨年度に文部科学省事業として採択されたグローバル人材育成プログラムについてお話いただけませんか。

(福原)本学の人材育成は、まずグローバル・ジェネラリスト(GG)を育て、そしてグローバル・リーダー(GL)やグローバル・スペシャリスト(GS)へと育てていくことを標榜しています。まずGGですが、国際感覚を持って実務を主体的かつ着実に遂行できる人材であり、それには世界どこでも通用する教養やリベラルアーツ、状況を踏まえて今どうすべきなのか自分で判断していける能力が求められます。こうした能力を養うために、学部の枠を超えて授業が履修できるファカルティリンケージ・プログラム(FLP)を設け、国際協力プログラムなど幅広い教養の習得を図ります。
 次にGLですが、現場で役に立てることが条件で、本学の卒業生に瀬谷ルミ子さんという日本紛争予防センターの理事長をされている方がいて、まさに本学がめざすグローバル・リーダーをいち早く体現しています。彼女のように世界のどこにあっても日本人としてのアイデンティティーを持ちながら客観的に現場を見ることができ、現地の人々の困っていることを理解し共感できる人材を育てたいと思います。
 そのために、海外実習を行うと同時に日本語教育に関する専門科目を履修し、日本語・日本文化を世界に伝えるSENDプログラム(Student Exchange Nippon Discovery)を昨年から始めるなど、様々な取り組みに挑戦しています。

(佐々木)グローバル人材育成といっても、我々教える側が学生個々の多彩な素質に気づき、適切な教育環境を提供することが求められるのではないでしょうか。

(福原) その通りだと思います。例えば本学の法学部では、「やる気応援奨学金」を支給しています。同奨学金は、学生自ら活動のテーマ設定、計画作り、成果の報告を行う「プロジェクト実行能力」を養うもので、どのような活動テーマでも厳しい審査を通過すれば奨学金を支給し、海外留学の場合は最高142・5万円の支給額になります。

(佐々木)なるほど。学生の多様な自主性を支援する制度が準備されているのですね。留学生の受入れと共に世界的な視野で人材育成に力を入れている中央大学の取組みがよく分かりました。本日は貴重なお時間をどうもありがとうございました。
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ふくはら ただひこ 中央大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得満期退学。杏林大学を経て、1993年から中央大学に勤務。法学部助教授、教授などを歴任し2011年11月学長に就任。



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