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トップに聞くグローバル教育の行方

Top向学新聞トップに聞くグローバル教育の行方>村田晃嗣氏(同志社大学学長)×佐々木瑞枝氏(金沢工業大学客員教授)

村田晃嗣氏(同志社大学学長)         
 ×佐々木瑞枝氏(金沢工業大学客員教授)
 


宗教に根ざした人間理解の促進  
日本文化を学ぶ得難い空間

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 同志社大学の創立者・新島襄は幕末に国禁を犯し米国に渡った。米国で大学を卒業し、「日本人で初めての大学卒業者」となった新島は、日本文化の中心地である京都にキリスト教の学校を作りあげた。今日、その宗教に対する寛容性は大学の無二の財産となっている。今回は金沢工業大学の佐々木瑞枝客員教授が、同志社大学の村田晃嗣学長にお話を伺った。


(佐々木) 一昨年、同志社大学の創立者である新島襄の妻・新島八重を題材としたNHKドラマが放映され話題になりました。改めて同志社大学設立の経緯を教えて頂けますでしょうか。

(村田) 創立者の新島襄は1843年に生まれ、日本人で最初に大学を卒業した人物だと言われています。幕末に西洋文明とキリスト教を学びたいと、当時国禁を破って函館から船に乗って米国ボストンに渡りました。アメリカ人の船員と交渉して、武士の命である刀と交換で聖書を手に入れたというエピソードがあり、彼の信仰心を象徴する出来事だと思います。
 渡米後は、ブッシュ大統領親子も通った全寮制の名門校フィリップスアカデミーに進み、やがて全米トップクラスのリベラルアーツ教育を行うアマースト大学に進学しました。まだ日本に大学が存在していない幕末の時代、何人も日本人が海を渡りましたが、大学を初めて卒業したのは新島襄なのです。その経験をもとに、「日本のアマースト大学を作りたい」という志を持って、1875年に同志社英学校を設立しました。京都という日本文化の中心地にキリスト教の学校を作ることになったのです。

(佐々木) グローバル教育の重要性が高まっていますが、「京都」と「キリスト教の学校」という組み合わせは異文化理解において非常に効果的ではないでしょうか。

(村田)そうですね。これからの教育において、宗教に対する理解や感受性を育むことが重要だと考えています。日本を一歩出れば、命懸けで宗教を信仰している人たちがいるなか、自分が宗教的かどうかは別にして、彼らに失礼なく接する素養を身に付けることは欠かせないようになってくるでしょう。その点、本学はキリスト教の学校でありながら、相国寺の横、京都御所の真向かいに位置し、宗教に根ざした人間理解の促進という面で他大学が簡単に真似できないアセットを持っています。また、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の比較研究等を行う一神教学際研究センターという研究所があり、宗教理解を深める活動に取り組んでいます。

(佐々木) なるほど。では、具体的に留学生に有益であるどのような教育プログラムを提供しているのでしょうか。

(村田)本学の特徴として、米国の大学との深い繋がりを活かしたプログラムを提供しています。その証拠として、本学で学ぶ約1400名の外国人留学生のうち、中国・韓国に続いて米国留学生が多い構成になっています。
 例えば、アメリカを代表する14の名門リベラルアーツ・カレッジが日本語や日本文化などの日本学教育を目的として、1972年にAssociated Kyoto Program(AKP)を本学に設置しました。米国留学生は同プログラムで半年~1年間日本について学びます。学業以外では京都のご家庭でホームステイをさせて頂き、理論と実体験で日本を理解するのです。約40年間で1300人以上の米国留学生がAKPで学んでいます。
 2009年からは、ブラウン大学、コロンビア大学、ハーバード大学、スタンフォード大学など米国トップ大学が参加する「京都アメリカ大学コンソーシアム」の運営を京都大学から引き継ぎました。日本研究を志す留学生と日本人学生が本学を拠点に、英語で日本についての共同学習を行います。
 また、今後は留学生と日本人学生が共に学ぶ科目を提供する「グローバル教育センター」の設置や、教養科目を英語で学習するグローバル・リベラルアーツ副専攻を全学部で実施するなど、国籍を越えた共同学習・国際教養教育に重点を置いてグローバル化を進めていく予定です。

(佐々木) では、留学生の卒業後はどうなっているのでしょうか。

(村田)本学は出口の就職支援にも力を入れており、外国人留学生や日本人留学経験者等を対象とした合同企業説明会や英語でのキャリアフェアーを学内で実施し、京セラや神戸製鋼所など関西を代表する企業に参加して頂いています。
 このような企業との接点をもとに、今後は社会からのフィードバックを参考に教育プログラムを改善していこうと考えています。「本学を卒業した学生が社会でどのような評価を受けているか」について定性的な側面で企業の協力を得て調査を行うのです。特に本学の国際系プログラムで学んだ学生の長所と短所をお聞きし、より社会と連携した大学作りを目指しています。

(佐々木)それは素晴らしいですね。教育内容の充実や就職機会が更に増大していけば、「京都への留学」は付加価値がとても高まりますよね。

(村田) そうですね。実利的な面だけではなく、京都という土地は留学生が日本文化を学ぶには得難い空間です。京都の魅力は5年、10年と人生経験を積むにつれて分かっていくものであり、「学生時代を京都で過ごした」という経験が人生の中でどれほど価値があることなのか将来感じて頂けるはずです。

(佐々木) その通りですね。この度は貴重なお話をありがとうございました。

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むらた こうじ 博士(政治学) 1987年3月に同志社大学法学部政治学科卒業。その後神戸大学大学院に進学し、1995年9月に神戸大学大学院法学研究科博士課程後期課程単位修得退学。大学院在学中に米国ジョージ・ワシントン大学大学院博士課程(政治学)に留学。2000年から同志社大学で勤務。法学部助教授、教授、法学部長等を歴任し、2013年4月から現職。



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