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トップに聞くグローバル教育の行方

Top向学新聞トップに聞くグローバル教育の行方>山内進氏(一橋大学学長)×佐々木瑞枝氏(金沢工業大学客員教授)

山内進氏(一橋大学学長)        
×佐々木瑞枝氏(金沢工業大学客員教授)
 


モンゴルの留学生が総代に  
留学生の就職支援は日本随一

 「キャプテンズ・オブ・インダストリー」をスクールモットーにもつ一橋大学は、これまで産業界に数多くのリーダーを輩出してきた。今日では、日本人のみならず外国人留学生も日本トップクラスの企業に送り出しており、真の国際大学を作り上げている。今回は一橋大学の山内進学長に金沢工業大学の佐々木瑞枝客員教授がお話を伺った。


(佐々木) 一橋大学は140年近い歴史を有する文系の研究総合大学としてよく知られています。大学の教育方針について教えていただけますでしょうか。

(山内) 本学のスクールモットーは「キャプテンズ・オブ・インダストリー」ですが、これはイギリスの思想家・歴史家であるトーマス・カーライルが著した言葉です。本学の卒業生が1900~1910年代頃ヨーロッパで学んでいた際、これからの日本を支える産業界のリーダーを育てないといけない、リーダーはしっかりとした志があって知識・学問を身につける必要があると強く思っていたところ、このカーライルの言葉に出会い共感したようです。企業人は単なる金儲けではなく、人々のために働き社会貢献するものだという高貴な精神を持ってこそリーダーたり得るということで、現在では「構想力のある専門人、理性ある革新者、指導力ある政治経済人の育成」と本学の研究教育憲章でうたっています。

(佐々木) なるほど。最近では大学の国際化も積極的に推進されていて、外国人留学生の受入れも盛んですね。

(山内)2013年5月現在、学部での留学生数が246人、大学院での留学生数が443人です。本学の学生総数は学部で4448人、大学院で1944人ですので、留学生の比率は全国的にも高いと思います。特に大学院では4人に1人が留学生です。出身地域別ではアジアが約86%を占めており、特に韓国が192人で全体の約29%を占めています。また、本学の留学生は私費留学生が多く、特に中国からは9割以上が、韓国も9割近くが私費留学生で、正規の授業料を払ってでも本学で学びたいという留学生が多いといえます。これは、本学の戦前からの長い歴史と伝統ゆえでしょうし、日本の産業界に多くの人材を輩出してきた基盤のゆえでしょう。日本経済は停滞期が続きましたが、一方で日本の産業基盤や裾野は広く強いものがあり、韓国人留学生もそのあたりは知っていて日本企業に就職して蓄積されたノウハウを吸収したいと思っているようです。また、本学には優秀な留学生が在籍しています。2012年度の総代はモンゴルからの留学生でしたし、成績上位10番以内に留学生が何人も入っています。

(佐々木) 素晴らしい!留学生と日本人学生が切磋琢磨して本当の国際大学を作り上げているのですね。では、留学生の就職支援にはどのように取り組んでいるのでしょうか。

(山内)本学は日本随一のサポート体制で留学生の就職を支援しています。キャリア形成に役立つ授業を多数開講しており、産業界への太い人脈を活かしてインターンも体験できます。日本人学生には常識でも、外国人留学生にとっては分からないこともあるでしょうから、「外国人留学生のための就職ハンドブック」を作ったり、「留学生就職支援ネットワークシステム」を利用して就職試験対策などをWEBサイトで24時間好きな時に学べるようにしたりしています。具体的に就職先を見ると、銀行や商社、IT、製造業、エネルギーなどの分野で日本トップクラスの企業に続々と入社しています。

(佐々木) 大学のグローバル化やグローバルリーダー育成にも力を入れられているようですが、詳しくお聞かせください。

(山内)まず、世界トップクラスの大学で専門教育を受ける機会を提供する「グローバルリーダー育成海外留学制度」を発足しました。オックスフォード大学セントピーターズカレッジ、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンス(LSE)、ケンブリッジ大学ペンブロークカレッジ校(以上英国)、ハーバード大学(米国)というトップ大学に1年間学生を派遣するもので、本学が授業料等を全額負担します。学部学生が対象で、外国人留学生も応募できます。ただし、GPA(成績)や英語の能力などは相当高いレベルが求められますが、留学できる学生にとってはかけがえのない経験が得られるでしょう。
 次に、学部・大学院を通じて学生の国際交流を推進し教育のグローバル化を進めるために、毎年300人程度の学生の派遣と受入れを行います。300人の受入れはすでに達成しており、派遣のほうは現在200人程度ですが、あと2、3年のうちに達成できる見込みです。米国のカリフォルニア大学、フランスのパリ政治学院、中国の北京大学、韓国のソウル大学など50を超える世界の一流大学と大学間学生交流協定校として提携し、奨学金制度も充実しています。また、英語による授業を拡大しており、全学部及び大学院の国際企業戦略研究科や国際・公共政策大学院をはじめ、多くの研究科で専門科目の英語化を開始しています。

(佐々木)世界大学ランキングのことを考えると、英語という語学面で日本は不利な立場ですが、とても期待を持てる取り組みですね。日本独特のシステムや価値観が国際的には課題ですが、逆に考えてみるとここまで独自に発展をしてきて、グローバル化が進めば必ず存在感を向上させることができますよね。

(山内) そうですね。その点本学は、世界水準の研究と国際的連携の強化に取り組んでいます。例えば一橋大学、慶應義塾大学、津田塾大学がコンソーシアムを形成し、EUに関する理解を深め、広めることを目的としたEUSIという教育・研究・広報拠点を設立しました。欧州委員会によって公認、資金提供されている日本のEU教育研究広報拠点であり本校が幹事役を務めています。国際セミナーやシンポジウムの開催、欧州留学の説明会や奨学金提供を実施しています。夏には韓国、ヨーロッパの大学生と共に学ぶサマースクールを開催するなど積極的に国際交流に取り組んでいます。

(佐々木)EU域内は学生・学術交流が盛んで学ぶべき点が多いですし、日・欧州関係を考えても貴重な活動ですね。本日はご多忙の中、貴重なお時間をどうもありがとうございました。
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やまうち すすむ 1977年に一橋大学法学研究科博士後期過程単位取得満期退学。1990年4月~1999年3月同大学法学部教授、1999年4月~2010年11月に法学研究科教授を務め、2010年12月学長に就任。


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