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トップに聞くグローバル教育の行方

Top向学新聞トップに聞くグローバル教育の行方>立石博高氏(東京外国語大学長)×佐々木瑞枝氏(金沢工業大学客員教授)

立石博高氏(東京外国語大学長)        
×佐々木瑞枝氏(金沢工業大学客員教授)
 


日本語教育研究の世界的な拠点に  
日本初のアフガン社会科学系博士を輩出

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 ドイツ語、インドネシア語、ヒンディー語、ロシア語など20以上に及ぶ言語を学ぶことができる東京外国語大学。東日本大震災時には災害多言語翻訳支援チームを立ち上げ、災害や入管情報を最大22言語に翻訳・発信し多大な貢献をした。今回は東京外国語大学の立石博高学長に金沢工業大学の佐々木瑞枝客員教授がお話を伺った。


(佐々木) 東京外国語大学では、世界中の言語の研究や教育が行われていて、長い歴史を有する国立の外国語大学として内外に知られています。建学からの経緯や現在の取組みについてお話しいただけませんか。

(立石) 本学は江戸時代の1857年、幕府により開校された蕃書調所をその起源としています。紆余曲折を経て戦後の1949年、新制の東京外国語大学として再スタートしました。外国の言語とそれに基づく文化一般を研究・教授し、言語を通して世界の諸地域に関する理解を深めることを目指してきました。本学は外国語学部の1学部制でしたが、2012年に言語文化学部と国際社会学部の2学部制へと移行しました。この背景には、1990年代前後で世の中の外国語大学に対するイメージが大きく変わってしまったことがあります。本学は、単に言葉だけを学ぶ大学ではなく、外国語と文化そして地域研究を両輪にしていますので、その伝統をきっちりと打ち出すべきだと考えた結果、2学部制への移行となりました。

(佐々木) 世界中の言語・諸地域の理解を深めるにあたって、海外からの留学生受入れも積極的に行ってこられたのでしょうか。

(立石)はい。2013年11月1日現在、学部や大学院で学ぶ留学生は526名で、そのうち国費留学生が84名です。一方、留学生日本語教育センターで学ぶ留学生は68名で、あわせて約600名の外国人留学生が本学で学んでいます。全学生数が4千名弱ですから、留学生の比率は全国的にみても高いと思います。他大学でも最近は留学生受入れを積極的に行っているようですが、本学は伝統ある国立大学として世界中から、例えばアジア諸国やアフリカ、ラテンアメリカからも留学生を受け入れています。ユニークな課程を1つ挙げると、旧外国語学部の「日本課程日本語専攻」というコースがあります。45人定員ですが日本人が15名、留学生が30名で、日本人と留学生が一緒になって日本を対象化して学んでいます。ここで学ぶ留学生の日本語のレベルは高く、研究内容もハイレベルなので、中国や韓国からの留学生が多いのですが、非漢字圏の学生も積極的に受け入れています。ここでは各自の関心に応じて、日本文化や比較文化の研究が可能です。例えば日本史のゼミで、日本人と韓国人の学生が日韓の歴史の比較研究をすることもあります。

(佐々木) たいへん意義深いコースですね。先ほどの留学生日本語教育センターについてもう少し詳しくご説明くださいますか。

(立石)当センターは創立して43年になり、「日本語教育研究の世界的な拠点」を目指しています。2012年からは教育関係共同利用拠点として、他大学との連携を強化し、当センターが有する教育研究資源を提供するという大きな役割も担っています。留学生教育としては、第一に国費留学生の予備教育プログラムがあり、日本語をほとんど話せなかった留学生を1年ほどで各大学の学部できちんと授業が受けられるレベルにまで引き上げます。第二に交換留学生等に対する日本語プログラムで、留学生の日本語レベルに応じてきめ細かくコースを設定しています。

(佐々木) なるほど。交換留学生のお話が出ましたが、貴学では実際に交換留学はどのくらい進んでいるのでしょうか。

(立石)現在94校と学生交流協定を結んでおり、日本からの派遣が132名、海外からの受入れが108名です。1年以内、単位互換が可能です。例えばスペインでは、セビーリャ大学やマドリード自治大学、またポンペウ・ファブラ大学というエリート校と締結しています。私が研究でスペインに滞在していた経験があり、その時の人脈も活かしながら協定校を増やしています。

(佐々木)やはり人的交流が協定を結ぶために非常に重要なのですね。他にも留学生へのサポートや日本人学生との交流はありますか。

(立石) 本学では毎年5月末ごろにボート大会(学内競漕大会)を開催しておりまして2013年が100回目でした。1902年に始まったものですが、実は2012年から留学生にもチームを作って参加してもらっています。ですからその日は、日本人と外国人が一緒になって大いに盛り上がります。

(佐々木)それは素晴らしいですね!ボートを一緒にこぐ事で、仲間意識も芽生えますね。外国人留学生は卒業後、世界でどのように活躍されているのでしょうか。

(立石) 大学院総合国際学研究科に国際協力専攻があり、その中に平和構築・紛争予防専修コースがあります。英語によるコースで修士号を取得できます。発展途上国の、やがては公務員や官僚になったり、国際機関で活躍するような留学生を呼ぼうという意識で作ったコースです。現在、紛争が起こっている地域は主にアフリカや中央アジア、西アジアがメインですが、現在はいわゆるグローバル・スタンダードで紛争を解決しようとしています。しかし日本は特殊な立場、すなわちこれらの地域に対して直接植民地化に関与していないし、ヨーロッパ的な価値観ともやや異なるという中立的な立場にあります。だからこそ、日本的な視点で平和の問題を考えてみるのは意義があると思います。実際にこのコースで学んで博士課程まで進んだアフガニスタンの学生がいました。日本で初めて、社会科学系の学位を取ったアフガニスタン人学生ということで、今はカブール大学で教鞭を執っています。このように、実質的に国際貢献できるような留学生、あるいは日本人学生を育てることが本学に課せられた責務であると考えています。

(佐々木)長年にわたり外国語教育や地域研究に携わり、多くの有為な人材を育成してこられた取組みがよくわかりました。本日は貴重なお時間をどうもありがとうございました。
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たていし ひろたか 1978年3月東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了(文学修士)。1980年3月東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。1992年から東京外国語大学で勤務し、外国語学部助教授、教授等を歴任。2013年4月から現職。専門は歴史学(スペイン近現代史)。


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