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トップに聞くグローバル教育の行方

Top向学新聞トップに聞くグローバル教育の行方>永田恭介氏(筑波大学長)×佐々木瑞枝氏(金沢工業大学客員教授)

永田恭介氏(筑波大学長)         
 ×佐々木瑞枝氏(金沢工業大学客員教授)
 


トランスボーダー大学がひらく高等教育  
スポーツにサイエンスは必須


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 人文社会・工学・医療・体育など幅広い学問領域をもつ筑波大学。複雑化する社会において学問領域の横断は必要不可欠で大きな強みを持つ。さらに7月5日まで開催されるFIFA女子ワールドカップ日本代表にも選手を送り出すなどそのユニークさは郡を抜く。今回は金沢工業大学の佐々木瑞枝客員教授が、筑波大学の永田恭介学長にお話を伺った。


佐々木) 筑波大学は人文社会や工学、医学などに加え体育・芸術までを擁する国立総合大学ですよね。昨年文部科学省のスーパーグローバル大学(SGU)のトップ型に選ばれましたが、幅広い学問領域を持ちながらどのようなグローバル化に取り組まれるのでしょうか。

永田) 本学は「トランスボーダー大学がひらく高等教育と世界の未来」という構想を掲げています。「トランスボーダー(境界線をなくす)」には国境はもちろん、組織間、学問領域などあらゆるボーダーを越えるという意味が含まれています。
 例えば、海外大学との「科目ジュークボックス」という新たな試みを9月からスタートさせます。ボルドー大学(フランス)、国立台湾大学、カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)、サンパウロ大学など海外13のパートナー大学と単位互換性のある科目をジュークボックスのようにひとかたまりにして、現地で、あるいはeラーニングで学生に提供します。まずはボルドー大学の植物工学と神経科学を英語で、そして準備が整い次第UCIの情報工学などを開講し各大学の強みを活用したカリキュラム構成になっています。

佐々木) 日本にいながら世界一流大学の科目を学べる段取りが設定されているのですね。オンライン教育の充実は世界的な潮流を考えても重要ですが、実際の人的交流はいかがでしょうか。

永田)数値目標としては、2014年から2024年の10年間で全学生(約1万7000人)に占める外国人留学生比率を19・7%から30・4%に、日本人留学経験者を3・8%から27・6%まで増加させます。外国人留学生は現在3000人を越えており、国立大学の中での留学生比率は日本一、日本人留学経験者も一昨年は約450人、昨年は約650人と留学生・日本人留学経験者ともに順調に増加しており、学生の国際移動については目標を達成できる見込みです。外国人教員や海外大学で学位を取得した日本人教員の比率も底上げする予定ですが、課題は職員の国際対応能力の向上です。教員・学生と比べると語学力と専門性を併せ持つ人材が少ないためです。近年採用方針を変更し、新規採用者が修士号取得者であったり、海外に行く素養を持っていたりする職員を増やしました。
 また、海外主要パートナー大学との学内相互オフィスや職員の国際対応能力を強化するための研修事業拠点、留学生・日本人学生との交流の場など、国際交流スキームのためのワン・ストップ・サービスを提供するグローバル・コモンズ機構を2年前に開設し、全学的にグローバル化推進の雰囲気が高まっています。

佐々木) グローバル化という面では、SGUには「世界大学ランキングトップ100にランクイン」というミッションが課せられています。その点についてはどのようにお考えでしょうか。

永田)世界の大学間競争は熾烈で、世界ランキングトップ100に入ることはとてもハードルが高いと言わざるをえません。QS大学ランキング(2014/2015)では198位ですが、物理学など各研究分野を見ると既に世界100に入る研究がいくつもあります。この研究力を更に強化していくことがポイントだと考えています。

佐々木) なるほど。では、組織間のトランスボーダーについてはいかがでしょうか。日本の大学は学部間の独立性が海外大学と比べて強く、組織横断的な協働が難しいという課題があります。

永田)本学の特徴の一つとして、教員は学群に所属せず「系」という独立した教員組織に属しています。人文社会系、数理物質系、生命環境系など10系設置しており、教員は専門に近い系に所属します。教員組織が研究科などから独立しているため、新しい教育プログラムを立ち上げる際に学問領域を横断した授業担当教員の配置が可能なのです。2012年から系の運営を始めましたが、日本では本学だけの組織体系でこれもトランスボーダーの一つだと言えるでしょう。

佐々木)画期的な組織体系ですね!冒頭に触れたように体育も専門とするユニークな特徴を持ち合わせていらっしゃいますが、2020年の東京オリンピックが注目されるなか、「スポーツ×筑波」でどのようなことが実現できるのでしょうか。

永田)実は既にスポーツ界と様々なコラボレーションを行なっています。例えば、昨年開催されたブラジルW杯に日本代表として出場した本田圭佑選手が使用していたスパイクを開発したのは本学なのです。また、現在カナダで行なわれているFIFA女子ワールドカップの日本代表に選出されている安藤梢選手は本学の博士課程のOGであり、熊谷紗希選手は本学の学群(学部)に在籍しています。
 昨年にはトップアスリートのリハビリとトレーニング拠点である「つくばアスリートラボ」を開設し、スポーツ科学の専門家らによる身体管理、能力の向上に取り組んでいます。もともとは研究の一環として安藤選手や熊谷選手をサポートする専門チームを作ったことが土台となっています。同じく女子日本代表の鮫島彩選手は昨年、怪我からのリハビリを本学のラボで行ない、見事復帰を果たしています。 ラボでは最新テクノロジーを用いて運動能力のデータ分析や改善策の提案を行なっており、科学者がチームの一員として活躍しています。もはやスポーツにサイエンスは欠かせない時代なのです。

佐々木)大変素晴らしいですね。国境、組織、学問領域を横断するトランスボーター大学としての更なるご活躍を期待しています。この度はどうもありがとうございました。

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ながた きょうすけ 1976年3月東京大学薬学部薬学科卒業。1981年3月東京大学薬学研究科博士課程修了。薬学博士。国立遺伝学研究所、東京工業大学を経て2001年から筑波大学にて勤務。基礎医学系・教授、人間総合科学研究科・教授、学長特別補佐などを歴任し2013年に学長就任。



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