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ビッグイシュー

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ビッグイシュー  


ホームレスの自立を支援  ビジネス通じ社会問題を解決


 今月は、「ビッグイシュー日本版」を発行する有限会社ビッグイシュー日本の、佐野章二代表にお話をうかがった。


ホームレスが売り手の雑誌


――ビッグイシューとはどのような雑誌ですか。
 佐野 1991年に英国で始まり、現在世界27ヶ国、50の都市・地域で発行されている、ホームレスの人しか売り手になれない雑誌です。日本版の内容は、30代前半までの若者をターゲットに、著名映画スターなどのスペシャルインタビュー等を掲載する国際記事と、仕事・結婚など若者の抱える問題を取り上げる特集記事、国内を中心としたエンタテインメント記事の三本柱で構成されています。定価は200円で、1部売ると55%の110円が販売者の収入になります。販売者は最初は10冊を無料で受け取り、それを売って得たお金を元手に次からは一冊90円で仕入れて売り、お金をためていきます。自立に至るには、3つぐらいのステップを考えています。まず1日25~30冊売れば、1泊千円前後の簡易宿泊所等に泊まり、路上生活から脱出できます。次に、1日35~40冊売れるようになれば毎日千円程度貯金でき、7~8ヶ月で敷金をつくってアパートを借り、住所を持つことができるようになります。その次には、その住所をベースに新たな就職活動を行うことができます。
 われわれが行っているのはチャリティーなどではなく、ホームレスの仕事を作る事業です。彼らは仕事さえあれば元に戻れるのです。日本の場合ホームレスになる方は、製造業かサービス業で長年働いてきてリストラにあい、再就職できなかった中高年の方が多いのです。ホームレスというと「働く意欲がない人々」とみられがちですが、大阪のある調査では8割の方が夜アルミ缶を集めたりして働いていることがわかっています。売価は1㌔百円程度で大変な重労働です。それを考えると、働く気のない人がホームレスになるという見方は間違いです。しかも7割強の方が今後何らかの形で自立して元の暮らしに戻りたいと考えています。これを裏返せば、彼らの働き口さえ作れば、日本のホームレス問題は7~8割がた解決するといえるのです。


市民どうしの共同事業

――御社のように社会問題をビジネスで解決する「社会的企業」が注目されてきています。
 佐野 ホームレス問題はやはり民間が何らかの形で解決しなければならないと思います。国には問題を先送りしてしまう体質があり、そうするたびに日本社会自身の問題解決能力がどんどん衰弱していっているのですが、そのことへの自覚はあまりないようです。ホームレスの方たちも日本の国民であり市民です。われわれは解決できないといって手をこまねいているわけにはいきません。市民どうしの共同事業として、取り組もうと思えばできるのだということを示すことには大きな意味があるのではないかと思います。


――販売員の方の様子はいかがですか。
 佐野 現在の読者の3人に2人は女性です。従来は一番路上生活者を忌避していた女性の方々が関心を持って買いに来てくれる時、彼らは「ありがとうございました」と最敬礼するというのです。読者からも「あんな『ありがとう』は生まれて初めて聞いた」と電話があったりします。これは裏を返せば、マニュアルどおりの「ありがとう」が街中に氾濫しているということだろうと思います。販売員も少し経験を積むと、朝なら「いってらっしゃい」、夜なら「お疲れ様」と言えるようになります。するとお客さんも「がんばれよ」と声をかけて支えてくれる。こういう街角でのコミュニケーションがあるので、きつくてもやっていられるのです。中には、若い女性がファンクラブを興したり、販売員の方と話し込んで人生相談をしたりするような現象も起きています。それにヒントを得て、誌面には販売員紹介記事のほか、読者の相談にホームレスが答える人気コラムも掲載しています。これらのことは当初想像だにできなかったことです。
 ホームレスの方が販売員になることを選ぶのは、ある意味で自分がホームレスだということをカミングアウト(公表)するようなもので、非常に決断力の要ることです。しかし一度交流が生まれると、それを通して「俺ももう一回人生をやり直そう」という意欲、生きる意欲がわいてくるのではないかと思います。
 一日40冊売る人なら月に12万円稼ぎますが、生活保護でも12万円もらえます。しかしもらった12万円と、自分が街中で暑いときも寒いときも立って、苦労して稼いだ12万円は全く意味が違うのです。公的な福祉は最低限のセーフティーネットとして必要ですが、自立への意欲をスポイルしてしまう一面もあります。ホームレスの自立をどう促進するかという観点からいえば、市民自らが決断し活動することが必要であると、この事業を行う中で感じています。規模は小さいにしても、われわれの活動をヒントとして、また別の問題に取り組む動きが民間からどんどん出てくる、そのような社会の実現を目指すことが「社会的企業」としての使命であると考えています。


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