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カーボンナノチューブ

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カーボンナノチューブ 


今月は、名城大学教授、NEC基礎研究所特別主任研究員の飯島澄男氏に、カーボンナノチューブについてのお話をうかがった。

人間が作れる最も細い筒

――カーボンナノチューブ(CNT)を世界で初めて発見されたと聞いています。
飯島:私は小さな世界・ナノメートルの世界の現象を調べることがライフワークです。いろいろな観測手段のうち、電子顕微鏡で物性を評価することを専門に30年以上研究を続けていました。そして電子顕微鏡技術もわれわれが初めて開発したもので、その技術は世界一と自負しています。それらの経験と知識を積み重ねた結果の一つとして、1991年に発見したものがカーボンナノチューブ(CNT)です。

――そもそもどのようなものですか。
飯島:カーボンナノチューブ(CNT)とは、六角形の金網のように並んだ炭素原子の膜を丸めて中を空洞にした筒型の物質で、直径は1~数ナノメートルしかなく、現在人間が作り出すことができる最も細い筒と言われています。
  ナノテクノロジーの分野で扱うのはナノメートルという単位の世界ですが、1ミリメートルの1000分の1が1ミクロン、さらに1ミクロンの1000分の1が1ナノメートルです。たとえば私たちの髪の毛が数10ミクロンですから、髪の毛の1000分の1の世界ですね。当然目では見えないし、電子顕微鏡がないと見えないそういう世界です。

ダイヤモンドより強い

――ナノテク分野で代表的な新素材と言われているのはなぜですか。
飯島:カーボンナノチューブ(CNT)の強度は実に鉄の20倍、重さはアルミニウムの半分以下です。最も硬い材料としてダイヤモンドはよく知られていますね。確かにダイヤモンドはあらゆる方向からの力に強いのですが、ナノチューブは繊維の方向に引っ張るとダイヤモンドよりも強いんです。炭素が手をつないで材料ができるわけですから、つながりの強さがダイヤモンドよりも強いということです。切ろうとしてもなかなか切れず、金属よりもはるかに強い材料といえます。また、筒の巻き方や太さなどによってよく電気を通したり、半導体になったりすることから、シリコンと同じようにトランジスタを作ることができます。さらに、高い分子吸着力といった特性も注目されています。

様々な応用の試み

――具体的に実用化の面ではどのような試みがありますか?
飯島:おそらくいちばん早く実用化されるのは薄型のテレビ画面で、多分2~3年のうちにマーケットに出てくると思います。普通のブラウン管は簡単に言えば、針金に電流を流し温度を上げ、その先端から電子を無理矢理放出させるといった仕組みですが、熱いということは熱の分だけエネルギーを損失しているのです。ところがカーボンナノチューブ(CNT)を使うと電圧をかけるだけで自然に電子が引っぱり出され、加熱しなくても室温で電子が出てきます。ですから省エネタイプのテレビ画面ができるわけです。具体的には多分ブラウン管の5分の1~10分の1の消費電力で、薄型でしかも大画面のものができると思います。
  あとは燃料電池の心臓部に使われることも考えられています。
  さらにバイオ分野では、薬をある場所に集中的に投与するための運搬用にCNTを使う研究を私の研究室で進めています。吸着力がある素材なので、薬をチューブの中に入れてしまえばカプセルのようになります。材料としては非常に小さく体への親和性があるので、そのような目的に使用できるのではないかと考えています。
  あるいは、DNA(遺伝情報)が選択的に炭素の表面にくっつく性質を利用して、DNAの選別に使えます。これは既に実験に成功しています。ヒトゲノム(ヒトのDNA)が完全に解読されましたので、今度はどういうDNAがどういう体の機能に相当するかを理解すれば、その情報を使って人間の耳を作ったり鼻を作ったりできるわけです。タンパク質はみなDNAでできていますから、DNAからタンパク質を作るという方向にバイオテクノロジーは今大きく流れつつあります。ですからそのDNAの扱いに炭素の表面を使おうという研究がこれから注目されていくのではないかと思います。
  また構造材料としての利用も考えられます。鉄のような金属だと重すぎる分野ではアルミやマグネシウムなどの軽金属を使うわけですが、カーボンナノチューブ(CNT)にすればさらに軽くて強いわけですから、まず航空機やロケット、宇宙ステーションなど空を飛ぶものの材料として使われるでしょう。
  このように、素材の持つ特性を生かしたさまざまな応用の試みが現在進められています。


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