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カラー電子ペーパー 


電源を切っても表示を維持  表示切替も可、ペーパレス化へ

 今月は、富士通株式会社の「カラー電子ペーパー」のマーケティングを担当している、マーケティング本部企画部・野谷盛仁氏にお話をうかがった。


微弱電波で書き換え可能


――「カラー電子ペーパー」とはどのようなものですか。
 野谷 紙のように扱える新しい電子デバイスで、薄くて曲がるフィルムでできており、にじまず明るいカラー表示が可能で、しかも電源を切っても表示を維持できます。この三点をあわせ持っている点では、世界初と認識しております。書き換えは微弱電波だけでも可能なため、公共の場所での情報表示など、様々な応用の可能性が考えられます。
 表示機器としては従来のパソコン用の液晶ディスプレイと同じく、BMPなどの画像ファイルをUSBや無線などで送り表示できます。大画面にすることも将来的には可能で、曲がりますので、電柱や電車内の広告などへの使用を想定しています。看板や場所を貸している事業主の方にとっては、分単位で表示を変えることができますから、時間貸しビジネスが自由にできますし、広告を張り替えるためのコストも節約できます。通勤電車なら、女性専用車輌に女性向けの広告をその時間帯だけ出したり、走っている地域に合わせて広告を変えたりすることも可能になってきます。
 さらに、軽量で持ち運びが容易なので、重いノートパソコンやPDAを持ち歩かなくともよく、データを受信できる携帯電話と電子ペーパーだけで営業活動できるようになります。また、従来持ち歩いていた分厚いマニュアルや作業指示書の必要部分だけを、そのつど表示させることが可能になります。身近なところでは、電子新聞などへの応用も考えれます。
 他の例としては、バス停の表示への利用などが考えられます。表示を無線で一元管理して、状況に応じてリアルタイムで更新し、さらに現在位置や到着時間などを表示するようなバスロケーションシステムも設置されるようになるでしょう。


ペーパーレス化に貢献


――開発の背景は。
 野谷 環境にやさしい社会を築いていこうという目的意識のもとに、神奈川県厚木市にある富士通研究所で開発をはじめ、試行錯誤を経た後、試作品を完成させました。
 現在、消費サイクルの早い新聞や雑誌などが紙の全消費量のうちの一定の部分を占めています。オフィスなどでも大量の紙文書が発生し、何トンもの紙を使っている会社もあります。また、工場等においては、掲示板や作業指示書等に大量の紙が使われております。電子ペーパーは、これら工場や職場のペーパーレス化に大いに貢献できるのです。
 また、昨今はIT化の進展が著しいですが、それに伴って紙の印刷量はむしろ増えてきています。パソコンの画面は意外に見づらく、持ち運びにも不便ですので、文書や地図、メールでさえ印刷する場合があるからです。それらを電子ペーパーに表示させ、使い終わったら別の画面に書き換えるようなペーパーレスなライフスタイルを実現できれば、今まで大量に使い捨てていた紙を節約できるのです。その点では非常に環境にやさしい技術であるといえるでしょう。
 1枚当たりのコストを考えると電子ペーパーは紙に比べればかなり大きくなりますが、単にコストだけを比較すべきものではないと考えます。電子ペーパーにはコスト以上の価値があり、企業が紙を電子ペーパーに置き換えることは社会全体にとって大いに意義のあることなのです。富士通も社会の一員として環境活動に力を入れており、今回の電子ペーパーの開発もそういった環境活動の一つの形として提示しているものなのです。
 普及すれば社会の姿は大きく変わってくると思います。案内板としての設置において、表示保持のみなら電源が不要という点も大きなメリットとなります。書き換え時の消費電力は従来の表示媒体の百分の一程度ですから、太陽電池や乾電池を組み込めば、対応可能と考えております。このように低消費電力という面でも、エコ商品としての価値は高いと思います。


――貴社の製品開発における哲学とは。
 野谷 単に利益だけを追い求めるのではなく、社会に貢献していくということを、どんなビジネスをする場合においても考えています。これからは地球全体のことを考えたもの作りが必要です。社会生活を便利で豊かにしていくと同時に、環境問題の解決にも貢献できるような製品の開発に取り組んでいきたいと考えています。