Top向学新聞日本で働く留学生OBたち>張 鋭さん


張 鋭さん(中国出身) 
(三井物産株式会社) 


開拓精神持つ人が成功  社会は本当にエキサイティング


――会社では、就職活動中の留学生からのOG訪問を受けているそうですね。
 はい、私は年に2~30人は受けています。その際にお伝えしているのは、あまり自分が外国人だと意識しないほうが良いということです。だからといって日本人と同じようになりたいと思う必要もありません。「自分はこういう人間で、こういう強みがあるのでこの会社に貢献でき、さらに留学を経験したアドバンテージをも持っている」とアピールしてほしいです。

――グローバル人材に求められる資質とは。
 例えば日本にいる中国人留学生は中国と日本の架け橋になれますが、特定の国に強みを持っていてその国とのビジネスを任せられるなら、良い人材といえるでしょう。ただ、変化の速い今の時代には、武器を一つ持っていてもそれが陳腐化するリスクがあります。ですから常に危機感を持って次へ次へと開拓していける精神を持っている人が結局は成功できると思います。現状に安住せず、必要なものを吸収し続けることが大事です。
 今の日本社会はそういったリスクを取ることがあまり奨励されない構造になっています。しかしグローバル化の中で、新卒だけ採用して中途採用をしなかったり、終身雇用で会社に居続けたりする人事制度では日本企業はやっていけなくなりますので、これから徐々に変わってくるでしょう。

――将来への準備が必要ですね。
 そうですね。私は就職説明会などで学生と話すと、「大手企業に就職したいけれども別にやりたいことを持っているわけではない」という曖昧な動機の人が見られます。OG訪問でも、「なぜ商社に入ったのか」「なぜこの会社を希望したのか」「やりたいこと、将来のプラン」「入ってみて良かったこと」など基本的なことを聞いてくる人が多いです。

――入社面接で「なぜ当社なのか」と聞かれて答えられない人もいるようです。動機を明確にする事が大切ですね。
 企業が志望理由を聞く時には、完璧な正解を求めているわけではなく、その学生が志望するにあたって自分なりの考えを持っているかどうかを見ています。「私はこれをしたいから御社に入りたい」と見事に答えても、入社後にそれができるとは限りません。重要なことはその人がしっかりと考えているのかどうかです。就職活動は自分を見つめなおす貴重な機会でもあるので、どんどん考えて悩んで良いと思います。その際に一人で悩むとストレスになりますので、友達とみなで話して自分がどんな人なのか聞いてみたり、OB・OG訪問をしてみることです。そこで多くの気づきが出てきます。たとえ志望動機がはっきりしていない状態でも、実際に会社の方にどういう目的意識を持って入ったのか聞いてみれば、ヒントが得られるかもしれません。とにかく行動に移すべきです。
 ただ、学生の訪問を受けていると、やはりきちんと自分なりに考えて準備してきた人と、何も考えてこなかった人との差があることが見えてきます。せっかく先輩に時間を作ってもらう以上は努力は必要であり、すでにその段階から、就職したいという強い思いをどれほど持っているかが問われています。極端な話、なぜその企業に就職したいかという理由など嘘でも作れることは企業の担当者は分かっています。それでも全く何も準備してこないような学生は企業としては落とすと思います。内定を勝ち取るのだという意欲がどれくらい強いかで結果は決まってきます。
 やはり、働くことに対してどれくらい情熱を持っているのかが重要です。社会に出たいという強い思いがあれば就職活動に現れてきます。とりあえず多く受けてみる、というやり方では失敗しやすいです。また、就職活動が難しいからと大学院に進み、いつまでも学校にいてしまう方もいます。それはある意味で逃げているのであり、企業はそんな簡単にあきらめる人は欲しがりません。
 私は学部を出てすぐ就職しましたが、早く社会に出て良かったと思っています。声を大にしてお伝えしたいのは、社会とは本当にエキサイティングな所だということです。苦労もありますが、学生と比べてはるかに世界が広がり様々なことを経験できます。
 社会に出てから人間としてたいへん素晴らしい先輩方に出会いました。そういった方たちの仲間になりたいという思いが、私が働く大きな原動力となりました。見本となるような立派な方が社会にはいくらでもいますので、良き先輩と出会い、大いに学んでほしいと思います。



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