Top向学新聞>日本語のプロと考える ビジネス日本語 第2回

向学新聞2020年10月1日号記事より>

日本語のプロと考える ビジネス日本語 

~第2回 日本企業のオフィスコミュニケーション① ~
日本人は分かりやすい指示を、外国人側は確認を、

 まだ日本企業で働いていない留学生にとって、今勉強している日本語が、本当に仕事のコミュニケーションでも役に立つのか、心配な人もいると思います。今日は、オフィスでのコミュニケーションについて考えてみます。


 タイ人の会社員Aさんは日本人の上司から、明日、お客さんをホテルまで車で迎えに行ってほしいと言われました。明日、会社でお客さんと打ち合わせがあるそうです。打ち合わせに間に合うように車で迎えに行きたいのですが、打ち合わせの時間について、上司から聞いていません。ですからAさんは上司に聞きました。ちなみにAさんは日本語レベルが高く、東京の商社に採用されて1年目の会社員です。
 Aさん「すみません、明日の打ち合わせは何時ですか?」
 上司の返答は下の図です。

内定ブリッジ淺海一郎氏
淺海 一郎
内定ブリッジ株式会社、代表取締役。
ビジネス日本語教師。

 

①「打ち合わせは10時から12時のあいだにしようと思って」
②「打ち合わせは10時から12時のあいだ、しようと思って」

 この2つは、ほとんど同じ日本語ですが、意味は全く違います。しかしAさんはそのことをよく分かっていません。日本人上司は②の指示をしましたが、Aさんは①だと思い、ホテルからお客さんを連れて、会社に10時20分に着きました。打ち合わせを10時から始めようと思っていた上司は、昼休み、とてもAさんを叱ったそうです。どうしてAさんが叱られたか、みなさんは分かりますか?
 

あいだに

 実は、これは会社で本当に起きた話です。どうしてAさんが叱られたのか、簡単に日本語文法の説明をします。
①「あいだに」のあとは、1回だけすることを言います。ずっとしません。
②「あいだ」のあとは、ずっとすることを言います。
 つまり、上司は②の意味で、10時から2時間、お客さんとずっと打ち合わせをするつもりだったので、9時50分くらいには会社にお客さんを連れてきてほしかったのです。でもAさんは①の意味で、10時から12時のあいだに1回、どこかのタイミングで打ち合わせをすると理解したので、10時20分にお客さんを会社に連れてきました。
 このように、日本語文法は時々、文法のうしろの内容に条件(後件情報)があります。また、今回のように、助詞が1つあるかないかで、意味が違うことも珍しくありません。

 前回のコラムで、僕は「コミュニケーションは双方向(インタラクティブ)」だと言いました。この上司は、指示をもっと分かりやすくすることで、このようなことを防ぐことができたはずです。せめて「明日、お客さんと打ち合わせを10時から始めたいから、お客さんを9時50分に会社へ連れてきてほしい」と言えばよかったのですが、それができない上司も日本企業にはいます。
 では留学生のみなさんは何ができるでしょう。まず、中級文法をしっかり勉強してください。特に、仕事でトラブルになりやすいのが、今回のように、時間に関係ある日本語を間違えることです。指示が分かりにくい上司と一緒に仕事をすることになったら、指示の意味を確認するといいです。どんなに分かりにくい指示でも、指示の確認をしないでミスをすると、ミスはみなさんの責任になる可能性があります。また、お互いに理解をして仕事を進めたほうが、仕事の質も高まります。

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