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向学新聞2021年1月1日号記事より>

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第3回 日本企業のオフィスコミュニケーション②~仕事の進め方~

文化間のギャップを認識し、密なコミュニケーションを

 日本の会社に入ったばかりの外国人スタッフが困ることの1つが、仕事の進め方です。仕事のしかたは、国によって違いが大きいことの1つですから、今日はこのことについて考えてみます。

子供じゃないのに・・・
 フランス人の会社員Aさんは貿易会社に就職しました。社内で外国人は一人だけです。入社してから1週間、Aさんの仕事は何もありませんでした。すぐに仕事を覚えて、どんどん仕事をしたいと思っていたAさんは不安になったので、上司に相談しましたが、「まず会社に慣れれば大丈夫」だと言われ、どうすればいいか分かりません。その後研修を受けてから、だんだん仕事をもらうようになりましたが、誰でもできるような簡単な仕事だけです。将来の仕事もよく分からないまま、1年くらいが過ぎてしまいました。Aさんは今でも会社の中で、自分が子供のように扱われていると感じています。また、会社の人はとても親切にしてくれますが、自分が本当にこの会社にいる必要があるのかどうか、悩むようになりました。どうしてこうなってしまったのでしょうか。

内定ブリッジ淺海一郎氏
淺海 一郎
内定ブリッジ株式会社代表取締役、ビジネス日本語教師、厚労省「雇用管理に役立つ多言語用語集及び翻訳データの作成・普及事業」有識者研究会委員、JETRO高度外国人材スペシャリスト



キャリアと配属
 仕事内容がはっきりしていて、その仕事ができる人を採用する方法を、「ジョブ型採用」と言ったりします。しかし日本の多くの会社は、特に新卒採用の場合、ジョブ型採用をしていません。基本的なことを勉強するために、最初の1〜2年は色々な仕事を経験してほしいと考えている会社も多くあります。また、同じ理由から、配属(どの部署で働くか)についても、その人の専門ではない(その人が大学で勉強していなかった)配属になることもあります。こういうことは、日本の会社ではよくあることなので、日本人側が説明しない場合も多いです。一方、外国人のみなさんは自分の専門やキャリアを大切に考える人も多いので、Aさんのように、入社した後に仕事がないことや、自分の専門や興味と関係がない部署に配属されて、研修が多く、子供のように扱われることに、ショックを受ける人も少なくありません。

プロセスか結果か
 また、仕事のしかたについても、外国人と日本の会社との間にはギャップがあります。会社や上司にもよりますが、日本では、1つ1つの仕事を上司がマネジメントすることがあります。これも、日本人側は子供のように扱っているつもりはありません。仕事の結果ではなく、そのプロセス(過程)をマネジメントしているのですが、もらった仕事は自分で最後まで完了して、その結果を報告したいと思っている外国人の中には、まだ仕事が終わっていないのに、上司から自分の仕事をいつも途中でチェックされることについて、驚いたり、嫌な気持ちになる人もいると思います

ネガティブな人間関係になる前に
 このように、仕事のしかた、仕事の進め方についても、国や文化によって考え方の違い(ギャップ)があります。その違いを知らないと、人間関係が悪くなってしまうかもしれません。ですからみなさんは、こういう違いがあることを知った上で、自分の気持ちや考えを、よく会社の人と話すことをおすすめします。
 例えばみなさんが入社する前なら、自分のキャリアや配属について、内定をもらった会社の人とよく話しておくことは、とても意味があると思います。その時は、自分の考えを話すだけではなく、相手の考え方や会社の考え方をよく聞いてみてください。特に、相手がどうしてそう考えるのか、よく考えながら聞くと良いです。また、みなさんが内定をもらう前なら、こういう話ができる会社、コミュニケーションをよくとってくれる会社を選んだほうが良いと思います。そういう会社なら、入社した後に何かトラブルが起きても、またお互いに話すことができる可能性が高いからです。
 会社にとっても、みなさんにとっても、入社することがゴールではないと思います。みなさんが入社した後、その会社でやりがいのある仕事ができることを、心から祈っています。



第1回 コロナ時代の就職活動
第2回 日本企業のオフィスコミュニケーション

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