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向学新聞2023年1月号記事より>

留学生の就職支援
第6回 対談⑤ 留学生の情報源

栗原由加氏

栗原由加 氏
神戸学院大学グローバル・コミュニケーション学部 教授

神戸学院大学留学生

神戸学院大学グローバル・コミュニケーション学部の留学生
左:ファン ティ アイン トゥ さん
 (ベトナム出身) 興和日本語学院卒
中:シュウ サン さん
 (中国出身)ヒューマンアカデミー日本語学校 大阪校卒
右:シンディ さん
 (インドネシア出身)大阪文化国際学校卒


目標達成は正しい情報から
正しい情報は良い経験から

就職活動の状況

(栗原)留学生は就職活動を始めるのが遅いし、応募する会社も少ないという傾向があります。みなさんは今3年生ですが、みなさんや友達の就職活動の状況はどうですか。

(トゥ)私の周りのベトナム人はまだ始めなくても間に合うと思って、まだ始めていない人が多いです。また、アルバイトで忙しい友達も多いです。

(シュウ)私の周りの中国人も、就職希望の人や、意欲が高い人があまりいないです。

(シンディ)私は説明会など行き始めています。キャリアセンターの掲示板に留学生向けの情報も載っていました。
 今の4年生の先輩たちの就職活動の状況はどうですか。

(栗原)就職を希望している学生は、ほとんど内定をもらいました。早い人は3年生の10月から活動を始めてうまくいきましたが、4年生になってから始めた人が多くて、全体的に動き始めが遅かったです。

(シンディ)内定取り消しはありますか。

(栗原)それは、めったにありません。

(トゥ)友達が、早く内定を取っても内定を取り消される可能性があるから、と言っていましたけど。

(栗原)そんな噂があるのですか。それは正しくない情報ですよ。
 次に、情報収集の方法について、聞いたみたいと思います。キャリアセンターにはあまり行かないようですが、どうしてでしょう。

(トゥ)私は、キャリアセンターにはあまり行っていません。係の人が知らない人だし、自分で企業について調べられないから、もういいかなと。説明会の案内もありますが、有名な企業ばかりで、先輩たちが入社しているような企業や、留学生が就職できそうな会社の名前がないから、ちょっと行っても無駄かなと思いました。大手ばかりの説明会に行ってもあまり自分にはチャンスがないかなという気持ちになります。キャリアセンターからメールが来ることもありますが、時間がなくてよく見ていないです。バイトのシフト希望を一か月前に出していて、シフトの変更は難しいので、シフトが決まった後から知ったイベントには参加ができないです。

(栗原)「アルバイトよりも学業を優先して良い」というのは知っていますか?

(三 人)知らないです。

(シュウ)友達に、インターンに参加しようよと話したことがあるけど、友達はアルバイトがあるから時間がなさそうで。

(栗原)アルバイト先の責任者の人に「先生の指示で、説明会に行きます」と伝えたら、シフトの相談ができるはずですよ。「早めに情報が来ないとバイトの調整ができない」と思っていると、これからもずっとアルバイトが優先で、就職活動をしないまま時間が過ぎてしまいますね。
 日本人学生の場合、アルバイトをする必要がある学生は、就職活動に向けて前々から予定を立てています。就職活動が一番忙しい時期は、就職活動を最優先にしてアルバイトを休むつもりで、前もって貯金をしています。こうした情報は、同じ国の留学生同士では、情報が得られる機会が少ないですね。

日本人や日本社会との関わり
(栗原)みなさんは日本人の友達がいますか。

(トゥ)いないです。他の国の留学生ともあまり遊んだことがなくて、一緒に食事に行ったのは一度だけですね。

(シュウ)私も、日本人の友達はいないです。ずっと前に、友達が連れてきた日本人学生と、一度だけ一緒に食事をしましたが、それきりです。

(シンディ)私もです。バイト先の人とおしゃべりをすることはあるけど、友達までの関係にはならないです。クラスは全員外国人だし、一緒にいるのはいつもインドネシアの友達です。

(トゥ)日本人の友達ができないのは、自分の日本語力が足りないのも原因だと感じます。あと、どんな話をすればいいのか話題に困ります。日本人と話すことって限られています。ベトナムの紹介、食べ物の紹介、是非食べてみてくださいね、で、10分くらい話したら話すことがなくなって、話が続きません。色々な活動に参加して知り合った日本人学生と、SNSでつながって数回やり取りをしても、友達にまではなれないです。

(シュウ)私の場合は自分が社交的ではないので、相手から話してくれるのを待っているのも原因だと思います。あと、私も日本語に自信がなくて、相手に伝わるかずっと心配しているのも理由だと思います。

(トゥ)ベトナム人のクラスメイトと一緒にいることがほとんどなので、もし、クラスに自分以外にベトナム人が一人もいなければ、私も頑張って他の国の友達を作ろうとするかもしれません。

(栗原)日本人とつながっていないと、情報をもらえる範囲が狭そうですが、必要な情報はどうやって集めているのですか。

(シンディ)生活の情報は大学の国際交流センターで、就活の情報は自分でネットで調べています。

(栗原)日本人や日本社会とつながりを持って、正確な情報を得ることは大切ですが、みなさんの話を聞いていると、現実にはとても難しいことだと分かります。みなさんが3年次の前期に参加した2か月のインターンシップは、良い経験になったのではありませんか。

(トゥ)私たちは、インターンシップ先の企業様の説明を聞いたり、要望に合わせて、外国人留学生向けの動画教材を作成して、納品するというインターンシップをしました。社会人としての心構えの話を聞いて、学生の意識との違いにびっくりすることもありましたが、それが勉強だったと感じます。実は一回目の面談に、予定より遅れてしまい、開始一分前のぎりぎりに到着して叱られました。時間に厳しいというのはどういうことか、分かりました。また、企業の方から、「質問がでないのは、今の話に興味がないからではないですか」と指摘されたことも、これまで全く気付いていなかったことでした。

(シンディ)私はいつもあまり質問をしなくて、自分の聞きたいことを質問すると、ささいなことだと思われるんじゃないかな、と思っていたのですが、それではいけないのだなと学びました。

(栗原)インターンシップは、みなさんが日本人と直接につながって、仕事での考え方を知るきっかけになったようですね。「良い経験」というのは、「楽しい経験」とは違うものでしょう。  
 
 今はまだ、学生が「良い経験」を増やせるようにするための仕組みが十分とは言えません。これからどうすればよいのか、学生のみなさんや社会の人たちが協力して、良い方法を考えていく必要がありそうです。



・留学生の就職支援
 第1回「現場から見える課題」
 第2回 企業の視点、大学の視点 対談①
 第3回 「仕事ができる人」とは? 対談② 
 第4回 対談③在留資格の注意点
 第5回 対談④キャリア相談とは
 第6回 対談⑤留学生の情報源

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